第6話
1時間目、数学。
こいつの授業ダルいな、なんか楽しくねえわ。というか完徹したせいでマジでうとうとしそうなんだが。…あ、やべえ意識飛んでた。
数学担当の教師は亀田という。うちのクラスの担任の腰巾着ポジションだ。
俺の席は端も端、ラノベの主人公がよく座ってる席だ。ほんの少しくらい、寝ててもバレないか。
そう思って寝ようとすると、いきなり亀田が怒鳴り出した。
「おい和田!何寝てるんじゃあ!」
しかし和田は起きない。マジかよ。よく怒鳴られてもまだ寝てられるよな。
結局和田は周りの奴につつかれてようやく起きた。
「授業真面目に受けん奴は西海に要らん!帰れ!」
亀田はこういうとき、「西海はそこらの高校とは違う」や「帰れ!」しか言わない。もうちょい説教のバリエーション増やせや。
てか危なかったな、俺も巻き添えになる所だったぜ。
そして説教はなんだかんだ15分ほど続いた。おいおい、授業の三分の一潰れたぞ。長過ぎんか。
その後しばらくして1時間目終了のチャイムが鳴った。
2時間目、英語A。
英語Aの先生は太田先生だ。教師の中では若い。たしか26歳だったか、結婚して2歳の子供もいるそうだ。
太田先生の授業は癒しだ。数学の100万倍楽しいと断言できる。生徒との距離感も近い。
「では3分ほど時間とるんで、皆でどんな感じの訳になったか共有してみてください。どうぞ!」先生が手を叩く。
生徒たちは席を立ち、各々の友達と意見交換を始めた。先生もウロウロして、生徒たちの訳を見ていく。
「はいでは席戻って!」先生が二回手を叩いた。
「えー、まず訳の解説に入る前に連絡事項から。」
そして先生は連絡事項を伝達する。ふと、「今先生絶対忙しい時期だよな、子供の世話やら仕事やらで絶対疲れてるだろ。」なんて事を考えていたら、
「外田!It is no use crying over spilt milk.の意味は?」
どうやら当てられたようだ。
「後悔先に立たず」
「正解なんだけど、一応直訳でお願い」
「こぼしたミルクに嘆くのは無駄だ」
「そんなニュアンスでいいでしょう、それが転じてさっき言ってくれたように『後悔先に立たず』とか、『覆水盆に返らず』って意味になります。」
授業は進んでいく。黒板のメモとんなきゃ。
「さすがサク。ボーッとしててもパッと答えられるの羨ましいわ」
「たまたまだよ」
そうこうしているうちに終了のチャイムが鳴った。ちなみに太田先生の授業では号令をかけない。本人曰く、「休憩と授業のスイッチが切り替えられるなら要らんでしょ」
なのでチャイムがなったらすぐ休憩できる。これはなかなか嬉しい。
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