第2話

俺が生徒指導室を出てきたのは、それから一時間後のことだった。くっそ、話長いんだよあいつ。

「で、あの新作のフラペチーノが〜」

「へ〜、今度行こうよ一緒に」

声がしたのでそちらを見てみると、女子の先輩たちが7、8人で群れをなして帰る所だった。その中に、

「ん?あれは生徒会長か…?」

霧生玲、この学校の生徒会長にして、容姿端麗で学業優秀の、才色兼備を絵に書いたような美少女だ。

「ねえ、玲さんはどうです?」と彼女の横にいた女子が尋ねる。

「ごめんね、私はその日は空いてないから…」

「あ、すみませーん」

わりと生徒会長クールなところあるんだよな…

そうやってなんとなく生徒会長の方を見ていると、最終下校時間を示すチャイムが鳴った。

「まずい、今日は新しい母さんとの初顔合わせなのに。」

そう、俺はつい最近まで父と二人暮らしだったのだが、その父が再婚するのだ。相手の女性には娘さんが居るらしい。

「どんな人なんだろうか…どうせなら綺麗な人がいいな…」

そんなことを考えながら電車に乗り、帰りついたのが夜の八時。

「ただいま〜」

「お帰り、遅かったな」

「ああ、ちょっと野暮用で…」

「おう。美緒さん、息子が帰ってきたから顔見せてやって」

「はーい」

数秒してリビングから女性が出てきた。

「初めまして、春樹あなたのお父さんと結婚する予定の霧生美緒です。これからよろしくね。」

「こ、こちらこそ、初めまして…」

彼女から出ているほんわかしたオーラに当てられて、不覚にもたどたどしい口調になってしまった。

「咲良君のことは春樹から聞いたわ。なんでも県内1位を取ったことがあるそうね」

「過去の栄光ですよ…。」

確か小学二年生の時のことだ。

…おい待て、霧生ってもしかして

「ほら玲、あなたも挨拶なさい」

「初めまして、霧生玲です」

そう言うと彼女はスタスタと2階に上がって行った。

…まさかあの生徒会長と家族になるとは。

「知ってるとは思うけど、あの子は西海の生徒会長だから、仲良くしてやってね」

「…あっ、はい」

やはり美しさって遺伝するものなんだな、美緒さんと会長の美しさの種類は違うけど。

「玲さんが咲良のひとつ上だから、玲さんが姉でお前が弟ということになるな」

…まあそりゃそうか。

あの会長が姉ねえ…銀あたり羨ましがりそうだな。

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