早く帰らせてください(切実)

織部

第1話

「おーい咲良、帰ろうぜ」

自分を呼ぶ声で振り返ると、そこには中学校からの仲間の一宮 銀がいた。

「またお前学年主任に呼ばれたのかよ」

「はあ、別にいいじゃねえかスマホ持ち込むくらい」

うちの高校はやたらと規則が厳しいのだ。今どきスマホ持ち込み禁止な高校なんてそうそうないだろう。

「この学校の上の連中は頭が固くて困るわホント」

「仕方ねえだろ、どうせここは自称進学校なんだから」

自称進学校は校則が厳しい、とは一概には言えないだろうが…

「さすが西海だぜ」と銀。

西海とは、俺の通う高校の名前だ。海って名前が付いてるのに山の中に校舎がある。何故だ。

俺たちが校門に向かおうとしたとき、

「おい外田」

生徒指導担当の江尻が俺を呼んだ。

「なんだこのネクタイの結び方は。まるでなってないぞ!」

「別にいいじゃないですか、ネクタイくらい」

「その気の緩みが将来の不合格に繋がるんだ!ちょっと来い!」

またかよ、面倒臭いな…

「てなわけで先帰っといてくれ」

「ご愁傷さん」

はあ、せっかく解放されたのにまた説教かよ……、気が重い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る