第28話 学園祭での出来事
意識を失いかけた ユウは少し前のクラスでの出来事を思い出す。
奇妙なものが写真に写る、そんな事はユウの起こす超常現象のごくごく一部であり、クラスの中でも、ユウを恐がり気持ち悪がる人間も多い。
説明がつかない不思議な事や、個人で招いたアクシデントも含め、ユウのせいになる事が多かった。
「本当に悪霊が取り憑いているわけだから、しょうがない」
ユウの霊能力は掛け値なしの本物。
その気になれば怪異を、学校中にまき散らす事など簡単な事。
時々全てに嫌気がさして、全てを壊してしまいたいと思うこともあった。
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「ユウ、あんたは学園祭、来なくていいから」
「なんで? 私が来ちゃ困る事でも?」
来月行われる学園祭の出し物を、ユウのクラスの女子が集まって相談していた。
「今回のうちのクラスの出し物、お化け屋敷なの」
「知っているわよ。だから?」
クラスの女子のリーダー役がユウを上から下まで見た。
「ユウが本当に、幽霊とか連れて来られては困るわ」
ユウは他校でも男子の噂に登る美少女であり、クラスの自分に姿に自信を持つ女子とは仲が悪かった。普段から相手の機嫌などとらないし、思った事、時には内心を突く鋭い言葉を発するユウは、女子にはあまり好かれるタイプでは無かった。
「変な噂が立ったら困るの」
目の前のクラス委の女子のリーダー役のこの子とは、特にうまくいっていない。
彼女が好きだった男子が、ユウに付き合ってくれと、告白した事が決定的な理由になっているようだった。
「噂ね。まあ、否定できないかもね」
ユウの返事を聞いた女の子が、クラスに聞こえる声で言った。
「ユウが異常な事を起こしている、その自覚はあるのね?」
ユウが異常である事を、クラス全員に認めさえたい女の子を、見つめる少しツリ目の大きな瞳。
その強い視線に、周りへ視線を逃がして援助を求める女の子。
「そうだ。ユウは来なくていい」
数人のクラスの女子に囲まれユウは、ハッキリ拒否を示された。
「ふ~~ん、わたしって結構、嫌われているんだ。人と違うってそんなに気になるの?」
「勘違いしないでね、これは差別でもなんでもないの。このクラスを守る為の予防策」
ユウは両手を軽く挙げて首を振った。
「はいはい、分かりましたよ。わたしは学園祭の時は、このクラスには来ません……これでいい?」
女の子は勝ち誇ったように笑った。
「いいわ。ユウは自主的に学園祭をボイコットするのね。クラスのみんなは、あなたを手伝わない身勝手な奴だと思うでしょうけど、まあ、その辺はわたしがうまく説明するから」
再び両手を軽く挙げて首を振ったユウ。
「どうぞご勝手に。ただし私に指図しないで、二度とね」
額にかかる前髪を後ろにかき上げ、少しツリ目の大きな瞳が冷たい輝きを放つ。
「いいわ……あなたに感じさせてあげる……本物を見せてあげる」
「な、なにを言い出すのユウ。そんな脅しは……」
ユウの右手がぼんやりと光りを放ち始める。それを見たクラスの女子は何か感じて後ずさる。その場で笑みを浮かべるユウ。
「脅し? 何を言っているの。あんた達が望んだものを体験させてあげると言っているの。喜びなさい。これでわたしをハッキリと化け物と言える。裏でこそこそ曖昧な、噂なんて流さなくて済むわ」
「あなた……私が裏でユウの話している事を知っているの?」
ハッと口を塞ぐ女の子。首を左右に振るユウ、
「ええ、生まれながらわたしは勘が鋭いの。あなたが色んな場所で、私の噂を流しているのは知っていた。まったくのウソでもないし、気にはしていなかったけど。面倒くさくなったからハッキリさせてあげる」
怯えて後ずさる女の子の手を掴んだユウ。
「や、やっぱり、あなたは、化け物」
「それがどうしたの? これからあなたが噂していた事。いや、それを遙かに超えるものを経験させてあげる」
ユウの右手がハッキリと輝き始め、握られた女の子が震え始める。
同時に教室の窓ガラスが共鳴し振動を始めた。
ユウの手からイナズマのような光が女の子の身体を走り、女の子は意識が失い白目をむき天井を見上げる。
「きゃああー」
クラスの女子の叫ぶ声が教室に響き、全員が慌てて逃げ出そうとする。
「開かない、扉が開かない!」
教室の前後二つの扉が閉まり、数人で引いてもピクリとも動かない。
「どうしよう?」
「廊下側のガラス戸を外して、廊下に出よう……え?」
教室の廊下側のすりガラスに、手をかけようとした女子が思わず手を離す。
何者かが廊下側からこちらを見ている。それが生徒や先生じゃないのはすぐに分かった。
ドンドン、ガラスを叩く何者かが、教室へ侵入を試みている。
その数は数十人以上、しかも窓を覆う人数は増えていく。
「な、なに?これはなに?」
教室は三階、飛び降りるは無理だが、窓際に走った数名の女子が外の景色に驚く。灰色の雲が地上近くまで降りてきて、地上はモヤがかかったようにハッキリしない。さっきまで見えた校庭はなく、荒野のような荒れ地、強い風が吹いているらしく窓が振動する。
動く者の姿を見つけた女子の一人が、恐怖で座り込んだ。
真っ黒な巨大な人ではない者が、こちらを見上げたからだ。
パニックになったクラスの女子。その一人が携帯を耳に当てた。
「もしもし、職員室ですか? 六年三組ですが大変な事になって……うぁあ」
女子が落とした携帯から声が聞こえた。
「お・ま・え・らは、こ・れ・か・ら」
教室の隅に固まった女子に聞こえた携帯の言葉。
「こ・こ・で・死・ぬ・死・死・死ね」
廊下から進入する者達の声が聞こえ始め、床におちた携帯電話からは、恐ろしい呟きが続いている。
「準備はいいかな? さあ行ってこい! 大霊界!」
クラスの全員がユウの宣言に、恐怖の表情を浮かべた。
「なんかどうでもよくなった。もうあんたらの好きにしたらいい」
歩き出すユウに慌てて道を開けるクラスの女子。
何者かが進入しようとしている教室の扉に手をかけたユウに、クラスの女子全員が息をのむ。
ガラガラ、扉は簡単に開き、その先には廊下を走る生徒とそれを注意する先生が見えた。
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