第8話 追憶 春の日々

それは遠い 春か遠い昔の出来事

南欧の暖かな春風が吹いていた 花が咲き乱れている美しい宮廷の中庭

「シオン」「はい、アキテーヌの姫君 アリエノール姫さま」

まだ幼い面立ちの姫 だが、並外れた美貌の片りんがそこにある


「吟遊詩人になる前に以前来ていたけど その衣装も似合うわね

曲も歌も素敵」幼い少女はそれは偉そうに年上の少年、吟遊詩人に向かって言ったのだ。


「そうですか?アリエノール姫様」楽しそうに笑う吟遊詩人の少年シオン


「御父様がまた、お出かけなの いつも忙しいわ 今度はどの貴婦人とお出かけなのかしら?」姫君であるアリエノール

「さ、さあ」シオン


「・・・」「なんでしょうか?姫様」


「夜、夜中に御父様の部屋で何をしてたの シオン?」「・・・・・・」


「御歌を謡ってだけです 

それにギョーム公はトウゴパール、素晴らしい吟遊詩人でもあるので

一緒に曲を作ったりとか」


「そうなの」「ええ」


そんな会話をした あの春の日の中で

英雄というべき2つの王国のアリエノール妃 それに英雄リチャード獅子心王の母に


魔物のシオンは甘い血の味を想い出しながら・・




7月 吉日


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