Butterfly's route * Mordred
華菜に家の鍵を掛けさせて、近くのコンビニに向かう。徒歩十分ぐらいにあるから、かなり便利な方に入ると思う。
「でねー、モードレッドは……」
華菜は家から出た途端、まくし立てるようにモードレッドについて話してきた。詳しいことはサッパリだが、とにかくモードレッドはアーサーの息子らしい。見た目はあんまり似てなかったが……。
「……とりあえず、ザッとこんな感じ! お兄ちゃん、分かった?」
「ああ、うん。何となく」
ここは頷いておかないと、延々とモードレッドの話が続きそうだ。とりあえず首を縦に振ると、華菜は嬉しそうにニッコリと笑った。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんもゲームやりなよー! 今、すっごく流行ってるんだよ?」
「そうか……。まぁ少し、検討しておく」
――華菜の言葉に返事をした、次の瞬間。俺たちの後ろから、はっきりと女の声がした。
「悠君、みーつけた」
「――っ!?」
こ、この声!! このしゃべり方!! まさか、いやでも、そんな……!!
「さ、坂下!?」
「くふふ、久しぶりだね。もう、相変わらずイケメンなんだから」
……後ろを振り返ると、そこには坂下楓がいた。俺に悪夢を見させた、最悪なストーカー女。
「私、悠君のことが好きで好きで、この街に戻ってきちゃった。ああ、会えてよかった!」
マズいマズいマズい……!! と、とにかく、華菜だけでも逃がさないと!!
「お兄ちゃん、この女――!」
「華菜! おまえは逃げろ!」
華菜の背中を思いっ切り押して、無理やりこの場から走らせる。坂下は何をするか分からない。それこそ、逆上でもさせたら……!
「悠君ったら、もしかして怯えてるの? 大丈夫だよ、刺し殺したりなんてしないから」
「くっ……!」
段々と近寄って来る坂下と、一歩ずつ後ずさりする俺。こういうときに限って、周りには誰もいない。
「ねぇねぇ、どうして後ずさりするの? せっかく会えたのに、私悲しくなっちゃうなぁ」
「ふざけっ――! くそっ……」
思わず「ふざけんな!」と叫びそうになって、慌てて奥歯を噛み締める。下手な口を聞くわけにはいかない。何とか上手く逃げ出さないと――!
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