End Agravain * Snitch
……結局、涼の言葉が気になりすぎて、二限はほとんど集中できなかった。笹木も清水も仲のいいやつらだし、亀裂の入るようなことは避けたいんだが……。
「よっ、篠田! 今から食堂?」
「あっ、笹木……」
教室から出てきた笹木を見た瞬間、涼の真剣な表情が脳裏をよぎる。「あまり近づかない方がいい」……。
「……いや。ちょっとやることがあってさ」
「そっかー。頑張ってー」
笹木には悪いが、涼の忠告も無下にはできない。俺は適当にその場を片づけて、さっさと部室に向かった。
「悠、来てくれてありがとう」
「まぁ、話の続きが気になるからな」
部室の引き戸を開けると、ハンバーグを頬張る涼の姿。その横には、もう一つのハンバーグ弁当が。
「これ、付き合ってくれたお礼」
「えっ? なんか悪いな」
さっきの分、まさかの俺の分だったのか。随分と準備がいい気がするが、腹も減ってるし、ここはお言葉に甘えて……。
「……ん? なんか変な味がするな」
「そう? 俺は普通に美味しいなぁって思ったけど」
ハンバーグの表面が、何となく薬っぽい味がするような気が……。他は普通の味なんだけどな……。
「うーん……。微妙に薬の味がする……」
「えー? そんなわけないでしょ」
だよなぁ……。そんなわけ……、ない、よな……?
「悠、もしかして寝不足? ちゃんと寝ないと良くないよ?」
そう言われると、ちょっと眠くなってきたな……。三限も講義があるのに……。
「俺が起こしてあげるからさ、ちょっと寝た方がいいんじゃない? 話はその後で、じっくり聞かせてあげるから」
「悪い、そうするわ……」
ヤバい……。本格的に、眠く……。
「おやすみ、悠。また後で」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます