End Agravain * Snitch

 ……結局、涼の言葉が気になりすぎて、二限はほとんど集中できなかった。笹木も清水も仲のいいやつらだし、亀裂の入るようなことは避けたいんだが……。

「よっ、篠田! 今から食堂?」

「あっ、笹木……」

 教室から出てきた笹木を見た瞬間、涼の真剣な表情が脳裏をよぎる。「あまり近づかない方がいい」……。

「……いや。ちょっとやることがあってさ」

「そっかー。頑張ってー」

 笹木には悪いが、涼の忠告も無下にはできない。俺は適当にその場を片づけて、さっさと部室に向かった。


「悠、来てくれてありがとう」

「まぁ、話の続きが気になるからな」

 部室の引き戸を開けると、ハンバーグを頬張る涼の姿。その横には、もう一つのハンバーグ弁当が。

「これ、付き合ってくれたお礼」

「えっ? なんか悪いな」

 さっきの分、まさかの俺の分だったのか。随分と準備がいい気がするが、腹も減ってるし、ここはお言葉に甘えて……。

「……ん? なんか変な味がするな」

「そう? 俺は普通に美味しいなぁって思ったけど」

 ハンバーグの表面が、何となく薬っぽい味がするような気が……。他は普通の味なんだけどな……。

「うーん……。微妙に薬の味がする……」

「えー? そんなわけないでしょ」

 だよなぁ……。そんなわけ……、ない、よな……?

「悠、もしかして寝不足? ちゃんと寝ないと良くないよ?」

 そう言われると、ちょっと眠くなってきたな……。三限も講義があるのに……。

「俺が起こしてあげるからさ、ちょっと寝た方がいいんじゃない? 話はその後で、じっくり聞かせてあげるから」

「悪い、そうするわ……」

 ヤバい……。本格的に、眠く……。

「おやすみ、悠。また後で」

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