Butterfly's route * Agravain

 昨日の夜の内にレポートを書き終えた俺は、翌日は余裕を持って大学に着くことができた。今日は一限がないので、次の講義が始まるまで適当に時間を潰すことにする。

「円卓の騎士……かぁ」

 昨日のこともあってか、何となく円卓の騎士について気になり始めてきた。本当に名前しか知らないし、せっかくだから本でも買って読んでみようかな? 俺、読書は嫌いじゃないし。もしかしたら、都合良く購買の書籍コーナーに置いてあったりして――。


「悠、おはよう」

「あっ、涼か。おはよう」

 ――購買に足を運ぶと、サークル仲間の涼が弁当を購入していた。俺の顔を見た瞬間、同じ弁当をもう一つ手に取ったんだが、まさか朝昼二食分か? 

「あのさ、悠。ちょっと話したいことがあるんだけど、外に出ない?」

「ああ、分かった。近くのベンチに座ろうぜ」

 この大学は結構広いから、あちこちにベンチが置いてあって、ちょっとした公園みたいになっている。昼間は休憩のための席取り合戦みたいになるんだが、さすがに一限の時間だからほとんど人はいないな。

「急にごめんね。どうしても、伝えておきたいことがあってさ」

「別に構わないけど、どうした?」

 涼は中性的な顔立ちのイケメンで、サークルの女子の間でも専ら噂になっている。本人はあくまで否定してるけど、告白とかされまくってるんだろうなー。

「あのね、言いにくいんだけど……。笹木さんと清水さんには、あまり近づかない方がいいよ」

「え……? な、何だよ、いきなり……」

 笹木も清水も、俺や涼と同じサークル仲間の女子だ。普通に仲のいいやつらだし、涼が何でこんなこと言うのか、全く見当がつかない。

「悠は気づいてないと思うけど、二人は悠に対して隠しごとをしてるんだ。だから、安易に話し掛けない方がいい」

「ちょっ、ちょっと待て! 隠しごとって、一体何だよ!」

 俺、何か悪いことでもしちまったのか!? 「隠しごと」って、絶対良くない響きだろ!!

「それは――」


 ――そのとき、軽快な音楽が流れ始めた。涼のスマホに電話が入ったみたいだ。

「ごめんね。続きは昼休みに話すから、部室に来て」

「あ、ああ……」

 なんか、妙にモヤモヤするな……。笹木と清水が、俺に隠しごとしてるって……?

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