End Tristan * Farewell

「あ、あれ? 急に黙っちゃって、どうしたの?」

「……あのさ、笹木さん。俺、こんなもの見つけちゃったんだけど」

 そう言いながら、涼がポケットから何か取り出した。……ん? 普通のUSBか?

「――っ!! かっ、返して!!」

 ――ちょっ! 笹木のやつ、いきなり慌て始めた! もしかして、これが忘れ物か?

「嫌だよ。だってこれ、立派な犯罪じゃないか。笹木さん、やっぱり悪い人だったんだ」

「うるさい!! 返してって言ってるでしょ!!」

 な、何だよ、一体! とにかく、二人を落ち着けないと!

「笹木、ちょっと落ち着けって! 涼も変なこと言うなよ!」

「悠、俺は事実を言ってるだけだよ。この中には、悠に関することがいっぱい入ってたんだ」

 ……は? 俺に関すること?

「こんな悪い人、悠の傍には置いておけない。だから今日は、お別れを告げに来たんだ」

 ――ま、待て!! 涼が持ってるやつ、小型のナイフじゃないか!?

「ふざけんなよっ!! おまえがその気なら、私だってやってやるっ!!」

 う、嘘だろ!? 笹木まで、刃物を持ち出すなんて!!

「駄目だ、笹木!! 本当に落ち着けって!!」

「篠田! 危ないから離れて!」

 このままじゃ、マジで殺し合いになっちまう!! 俺が何とか止めないと!!

「涼もいい加減止めてくれ!! これ以上やったら――」


 ――あっ……? お、俺の腕に、涼のナイフが刺さって……。

「悠、ちょっと大人しくしてて。すぐに終わるから」

「おまえぇぇぇぇぇ!! よくも篠田を傷つけたなぁぁぁぁぁ!!」

 ま、待ってくれ……。駄目だ、二人とも……。

「ぐっ、うぁっ……」

「笹木さん、これは当然の報いだよ。君の罪は、死ぬことでしか償えない」

 う、嘘だろ……。さ、笹木……?

「し、しの、だ……」

「あ……、ああっ……」

 な、何で……。何で、笹木が死んで……。

「ごめんね、悠。痛かったよね。今手当てしてあげるから、ちょっと待ってて」

 りょ、涼っ……!!

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