Butterfly's route * Galahad

「はぁー……。何とか提出できた……」

 華菜にデータを消された俺は、あの後必死に徹夜して、締め切り時間ギリギリにレポートを提出した。一晩寝ずに過ごして大学に行き、講義の合間を縫って図書館に駆け込む。長いレポート課題だったから、マジで終わらないかと思った……。

 パソコンをシャットダウンして時計を見ると、針は午後六時を回っている。もうそんな時間か……。家に帰ったら速攻で寝よーっと――。


「あの……、篠田君だよね?」

 ――あれ? この黒髪ロングの人は、確か同じ学部の……。

「あ、あづまさん?」

「うん。もし良かったら、一緒に帰らない?」

「え……?」

 東さんとは、社会学の授業で同じグループになったことがある。けど、いきなり一緒に帰ろうだなんて、全くの想定外なんだが……。

「篠田君、私と同じ路線だって聞いたから。せっかくだし、一緒に帰ろうかなって思って」

 あー……。グループワークのとき、確かにそんなこと言ったかもな。

「あっ、別に、駄目なら全然いいんだけど!」

「い、いや! 一緒に帰ろうぜ!」

 東さんと二人っきりって、地味に緊張するな……。サークル仲間の話慣れてる女子なら、こうはならないんだけど。


「篠田君ってさ、彼女とかいないの?」

「へっ!? い、いないけど!?」

「そっかぁー。ふふふ……」

 電車に乗った途端、いきなり彼女がいないかとか聞かれると、余計に緊張しちまうって! しかも東さん、結構可愛いし……。

「逆に東さんは、彼氏いないの?」

「うん。……でも、好きな人はいるんだ」

 へぇー、片想い中か……。そう言われると、誰が好きなのか気になるな……。

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