どこにでもあるような争い

「ただいま~…」


「あ、おかえりなさい二人とも。どうでした?」


「ダメだった…」


 俺は簡易的に作られたソファーにダイブして言った。

 そう、結局あの後探し続けても何の手がかりも見つけられなかった。


「けど、絶対何かあるはずなんだよなぁ~…」


 俺はソファーと熱いキスを交わしながら言う。


「どうしてカナタはそう思うんですか?」


 そんな俺にリリが質問してきた。

 まあ、当然と言えば当然だ。

 この辺りの地理に詳しい住民のスライム達が探しても痕跡がないという結論に達したにも関わらず、昨日今日来たような人間が確信持ってそう言ってたら不思議に決まってる。


「……まあ、何だその経験って奴かな」


「経験?」


「簡単に言うと、どんな物事にも必ず理由があるって事。だから今回のゴブリンが急に現れて急に消えるのにも必ず何かしらの理由があるはずなんだよな」


 計算の間違っている数式が答えに辿り着けないよう、エラーコードを吐いたプログラムが正常に機能しないよう、どんな事にもそうなった原因は必ず存在している。

 けど、ここは元々俺の居た世界じゃない。

 魔術や魔法、ゲームの世界でよくあるスライムやゴブリンが闊歩している様な異世界だ。


「甘くねえな~…」


 俺はひしひしとその現実を突きつけられる。


「うーん…」


「なんでリリまで頭を悩ませてんだよ?」


 俺はいつの間にかソファーの半分ほどに腰掛け、頭に指を当てるリリに言った。


「だって、カナタ一人で考えても答えが出ないじゃないですか?」


「ハッキリ言うな」


 この女、見た目の可愛さとは裏腹に結構毒舌だ(俺限定で)。


「なら、こうして私も一緒に考えているのです。一人で悩むよりも、二人で悩んだ方がもっと気も楽ですよ」


 リリはそう俺に笑いかけた。

 俺に対しての言葉はアレだが、これも彼女なりの気遣いなのだろう。

 それに対してだけは、素直に感謝しておくとしよう。


「ありがとな、リリ」


「え!? えへへ、そう素直にカナタから感謝されると、なんだか照れますね」


 だが、


「このソファー現在俺が占領している」


「痛あ!?」


 俺はリリの腰を足で押し、彼女の体をソファーから離した。

 そしていま彼女は代わりに床と勢いよくぶつかったのだ。


「何するんですか!?」


「言ったはずだ。今このソファーは俺の物。よって、お前が腰掛けるスペースは存在しない!」


「~~~~!!!! 落ち込んでると思ってせっかく心配したのに! もう、カナタがそういうならこっちにだって考えはありますからね!」


 そう言うとリリはおもむろに俺にまたがって来た。


「おいなにすんだよ重いだろ!」


「重くないですよ!? レディー向かって何てこと言うんですか!?」


「レディー? ふっ…」


「ああー! また笑いましたねカナタ! なんですか、今、私の胸を見て笑ったような気がするんですけど! 言いたいことがあるなら言ってください」


 意外としっかり見てるなコイツ。

 しかしだ、こう、お世辞にも女性らしい抱擁さが欠如しているこのちんちくりんを前にして、笑うなという方が厳しいだろう。


「こうなったら、こうしてあげます!」


 リリはそう言って俺の脇腹をくすぐり始めた。


「ぷっははは! おい、リリ、や、やめろって……あっははは!!」


「いいえやめません! 今日という今日はカナタにキッチリ私がやる時はやる人だという事をおしえてあげます。ほらほら、まだまだいきますよー」


 この後、小一時間ほど俺はリリにくすぐられ、俺は笑い疲れ、意識を手放したのだった。


◇◇◇後書き◇◇◇


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それではまた次回でお会いしましょう!

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冒険者ってホワイトな職業ですか? ポンチョ @poncho_02

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