さらなる強さへ
翌日から、俺達はこのファンタジアでゴブリン討伐への準備を始める事にした。
リリは前回のゴブリン襲撃で傷付いた者たちの手当て。
レイナさんは一度街へと戻ってさらに冒険者を集う。
そして俺は、単純に戦力としての強化。
「1、2、3…」
とは言っても、まだ単純な素振り程度だ。
みんなが寝静まってる朝早くに家を出て、こうしている。
「ふむ、やはりカナタ殿は中々見どころがありますな。懐かしいものです」
どうしてこの人は当たり前の様に起きているのだろうか…。
横で俺の素振りを見て言うモームさんにそう思う。
村を一通り見て回ったが、この人の他のスライムさんはみんな人型だった。
「なんでモームさんだけは人型じゃないんだ?」
「私はもう歳ですからな」
意味が分からない。
「どうして歳で人型かそうじゃないかで違うんだよ」
「スライムは元々人型です。それが歳を重ね、段々と人の姿を保てなくなると、私の様な姿になるのです」
「へー」
元々がそっちで、過ごしやすいように人間の姿になってるとかじゃないんだな。
なんだか意外だぜ。
「それにしても、まだ少ししか素振りしてないのに見どころとか言われてもくすぐったいぜ!」
俺は剣を振りながら返す。
「ご謙遜を。こうして朝早くから鍛錬することを厭わず、若い頃の私にそっくりです」
「へー、モームさんも剣を?」
と言っても、俺の方はにわか剣術も良い所だけど。
教えてくれた人は変人だけど達人、だけど教わった側は何処まで行っても凡人。
しかもここに来る前なんて剣すら握ったこともない、最初からこっちで暮らしてた人たちとじゃ比べ物にならないだろう。
「ええ。私も若い頃は村を出て、旅に出る事なんてしょっちゅうでした。時には一年中帰らない事も」
わあ、アグレッシブ…。
「時に、タツミ殿。貴女には剣の才能が見受けられるのですが、もしやこれまで剣を扱ったことがあまりないのでは?」
「あ、バレました?」
さすがは世界を旅していたスライム。
俺の様な付け焼刃剣術はすぐに見抜かれてしまった。
「まあ、一か月剣術の指導受けただけで、あとは独学だし」
「なるほど、それはそれは。ではどうでしょう、ここにいる間だけでも、私の修行を受けてみるのは?」
「モームさんの?」
「ええ、これでも昔は剣を
……確かに、これまでの敵は普通の剣術でも対処できた。
けど、あのローチクロコダイルには剣帝の力を持っても楽勝とはいかない目に遭った。
それは単純にまだ俺の剣術が基礎の域を出ないからだ。
剣帝で最高火力になるのはあくまでその剣技としての最高火力。
初歩的であればあるほどその恩恵は低い。
この先に、もし仮にローチクロコダイル以上の高度を持つ敵が出て来た時に対処できないと困る。
「分かった。そういう事なら、こちらとしてもお受けしない理由はありません。お願いします」
「ハッハッハ。素直なお方だ。先に言っておきますが、私も教える以上手加減は致しませんぞ?」
「それは怖いな…」
「冗談です。では、さっそく明日から修行にかかりましょう」
「押忍!」
◇◇◇後書き◇◇◇
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それではまた次回でお会いしましょう!
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