新たな武器

 モナという少女との会話をした翌日。

 俺は街の中にある国立の図書館に来ていた。


「……うーん。この本にも無いかあ」


 目的は二つ。

 一つは悪魔が言っていた魔王と魔将星のこと。

 もう一つはこれまた悪魔の使った魔法のこと。

 アイツは魔術を低級な技と言っていた、だからもしかしたら本にでも残されているのかと思ったが、どこを見ても魔法の文字どころか魔王という単語すらない。

 なにせ悪魔でさえ残っている文献はわずかだった。


「まあ、御伽噺に出てくるような奴だからな」


 そう、相手はリリや、あのエレインですら御伽噺で知る存在。

 その頂点ともなれば、文献はあっても無くても当たり前なのかもしれない。

 それに今知ったからと言って、手を出せるわけでもないし。


 その後、俺は図書館を後にした。

 そして約束の三日後―――。


「はい。これ」


 再びモナと会った俺は彼女から一本の剣を手渡された。


「いいのか? 俺言いたくないけど金無しだぞ?」


「いい。報酬に上乗せしておく」


 モナは静かに返す。

 彼女にとって今回の依頼はそこまでする程なのか。


「……ありがとう。それじゃあ俺も、冒険者としてこれに恥じない働きをしないとな」


 俺は剣を腰に添えて彼女に言う。


「それで、エナメル鉱山にはいつ向かう?」


「いつなら都合がいい?」


「別に俺はいつでもいいけど。あれ? リリは?」


 そう、何故かこの場にこの依頼を請け負ってきたリリがいない。

 姿すら見えないのだ。


「知らない」


 それはそうだ。

 逆に知ってたらどんな関係なのか気になるわ。


「……寝てんのかな?」


 俺はモナを引き連れて例の倉庫―――もといリリの寝床に向かった。


「おーいリリ! いるかー?」


 俺はドアを数回ノックする。

 しかし、中からリリの返事はない。

 仕方ない、強行するか。


「リリさーん。寝てますかー?」


 俺はドアを開ける。

 そして倉庫の中では、案の定というかなんというか、リリが寝ていた。

 

「やっぱりか…」


 俺はその様子に頭を押さえる。

 そして彼女の体を揺する。


「おーいリリ起きろ! 依頼人のご到着だぞ」


「えへへ、こんなにたくさん食べられませんよ~…」


 ベタな寝言言ってないで早く起きてくれよ。

 

「……せい」


 俺は彼女の脇腹を突く。

 素肌が若干露出しており、加えて無防備な状態のリリは当然、それを避ける手段が無い。


「うひゃあ!」


「おお、起きた」


「な、何するんですかカナタ! レディの眠りを妨げるなんて、紳士にあるまじき行為ですよ!」


「俺は紳士じゃないからな。お前がいつまでも寝てるから悪いんだろ?」


「うぐっ…。け、けど今日は別に用事もないからいいじゃないですか!」


 その用事があるから俺はここに来たんだがな。

 俺はモナの存在を証明する様にリリにその方向を指差す。

 それで、ようやくリリも何で俺がここに来たのか理解したようだ。


「も、モナさん! 今日はどうしてここに?」


 リリは慌てて身なりを整える。

 安心しろ、もうさっきのどうしようもない姿を見られてるから遅い。


「出来ることなら、今日すぐに依頼を受けてほしい。だからここに来たの。頼める?」


 モナがリリに言う。

 すると次にリリは俺を見た。


「カナタはいいんですか?」


「俺? 俺は別に構わねえよ。親方にも昨日辞めるって言ってきたし」


「そうですか、分かりました。それじゃあすぐにでも準備をさせていただきます!」


 リリは寝起きとは思えない良い笑顔でそう返した。

 

「それで、そのエナメル鉱山にはどうやって行くんだ?」


「歩き」


「え?」


 聞き間違いかな?

 なんだか今とてつもない言葉を聞いた気がする。


「ごめん俺の聞き間違いかな? もう一回エナメル鉱山への移動方法を聞いても良いかな?」


「だから歩き。一日ちょっとかかるから、今日向かえるのは素直にうれしい」


 その時、俺は思った。

 ああ、土木作業とかで体力つけてて良かった―――と。


◇◇◇後書き◇◇◇


今回も読んで下さりありがとうございます!

皆様からのレビュー、感想、応援、フォローお待ちしております!


それではまた次回でお会いしましょう!

 

 



 

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