一難去ってまた一難
「よーし! 一旦休憩だ! 手え止めろ!」
「「「「うーっす!」」」」
暑い日差しと活気に溢れる街並み。
その中で、俺は土木作業に明け暮れていた。
立見奏汰、41歳、現在宿無しである。
理由は簡単、俺達はあの宿を去った。
元より悪魔を倒すまでの間だけ無料で住まわせてくれるというものだったからな。
もちろん、スワロフさん達はそんな事気にしないと言ってくれたが、俺が気にする。
この世界で自由に生きるとは意気込んだが、甘えて生きる事は出来ない。
だからこうして、土木作業に勤しみながらその日暮らしをしているのだ。
「いやー、タツミさんが来てくれて助かりました」
「だな、力も体力もあるから仕事が進んで助かるぜ! やっぱり、冒険者様様だな!」
俺を口々に褒めるみんな。
宿を去り、この仕事についてからいつもこんな感じだ。
そしてこの後は、格安の小さな風呂屋で汗を流し、テントを張っての野宿になる。
一応いつ来てくれてもいいという風には言われているから管理部で依頼を受ける事は可能だ。
「けどやっぱり、家が欲しいな」
俺はそう呟きながら道を歩く。
マイホームとまでは行かないから、せめて賃貸にでも住めればと思う。
「リリは、どうしてるかな…?」
俺は今ここにいない彼女の名を呟く。
宿を去ってからは一緒に行動する理由もなくなったからリリとは別れたのだが、元気にしていればいいとは思う。
一時とは言え、コンビだったからな。
「カナタ! やっと見つけましたよ!」
そうそう、こうしていつも俺の名前を呼んでたっけ。
て、え!?
「リリ!?」
「はい」
「何してんだよこんな所で!?」
そこには、こちらを向くリリが居た。
だが、何故かしかめっ面だ。
おかしい、俺が何をした。
「カナタこそ、管理部に顔も出さないでどういうつもりですか?」
「顔を出そうにも武器が無い俺が行ってもなあ。それに、たまにはこういうのも良いかなと思って、今は土木作業の手伝いをしながらテント暮らしさ」
そう、あの悪魔との戦闘の後、俺の剣は根元からぽっきりと逝ってしまった。
多分だけど、今までの振りに耐えきれなかったのだろう。
振ってるのは一般人でも、火力はその剣技の最高火力。
ただその場しのぎの用立てで買ったには、心気ありとは言え保ったものだ。
「そ、そうなんですか。大変ですね…」
「そうでもないさ」
意外とテント暮らしも悪い物じゃない。
風呂が無いのと、周囲から若干浮いた目で見られることを除けば。
「な、なら私の依頼を手伝ってください!」
「リリ、お前俺の話を聞いてなかったのか? 俺には武器が無いんだよ」
一応拳闘スキルがあるにはあるが、このスキルはあまり使いたくない。
そんな思いから俺はリリに手のひらを見せる。
しかし、リリはそれに対して首を振る。
「大丈夫です! 今回の依頼は戦闘がありません! しかも達成すれば、住む場所を提供してくれるのです!」
「おい待て、その依頼怪しさしかないんだが?」
戦闘がなくて達成報酬が住処だと?
そんな美味い話があるものだろうか?
「大丈夫ですよ! ちゃんとしたところからの依頼なので」
リリは自信ありげだ。
まあ、一応話だけは聞いてみよう。
「で、その依頼って?」
「はい! こちらの方が依頼主です!」
リリの後ろから現れる人影。
だが、俺はその顔に覚えがあった。
「君は、確か前に武器を売ってくれた」
そこには、以前俺達に武器を売ってくれた女の子が立っていた。
どうやら、今回の依頼も一波乱ありそうだなと思いましたとさ。
◇◇◇後書き◇◇◇
今回も読んで下さりありがとうございます!
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それではまた次回でお会いしましょう!
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