第14話『ヤキモチ』

 帯状疱疹が出現できてから、約2週間が経過した。


 疱疹の部分は、かなり乾燥し、瘢痕化はんこんかしているので、周りの人に感染させてしまう危険は、ほぼなくなった。


 そろそろ職場復帰したいのだが、まだ痛みが続いている。 何かの拍子に、脇腹や腰にちょっと触れただけで『ビキッ』……っと痛みが全身を貫く!


 座っているのもつらいので1日の大半をベッドの上で過ごしていたのだが、さすがにそろそろ身体もなまってきた。


 昼食の時間になり、痛みをコラえて椅子に腰掛けた私に「まだ横になっていた方が良いよ」と、母が心配そうな言葉をかけてくれたが、私は愛想笑いを浮かべつつ「大丈夫……たぶん大丈夫」とこたえた。


 とにかく早く治したくて、母に、消化に良く、栄養価の高い食事を作って貰い、体重も500g増えちゃったのだが、今は養生ようじょうの時!


 美容は二の次!


 お料理の美味しさも手伝い、食欲に拍車がかかっていた。


 ……あれ……?


 い……いたい……


 なぜか……左足が……痛い!?


 気が付くと、左足が足の付け根から痺れ始め、爪先から徐々に冷たくなり、痛さで顔をしかめた。


 も〜っ💢  今度は何ぃ!?


 体重が500g増えたくらいで片足だけが痺れるなんて聞いたためしが無い!


「ほら、やっぱり無理はダメ! 寝てなさい!」……と母が珍しく厳しい声を発した。


「は〜い……」と小さく返事をして、歯を磨いてからベッドに横になった。


 暫くすると、足に血が通ったように痺れが消え、痛みも収まった。


 試しにベッドの縁に座るが、痺れは起きない。 


 仕方ないので、不貞腐れたように、そのまま眠ってしまった。


 その日の夕方……目が覚めて、シャワーを浴びにバスルームに行き、服を脱いで体重計に乗る。


 やっぱり500g増えてる(泣)


 顔はあまり変わらないが、お腹が少し太くなったような……


 ん?


 えっ?


 ええ〜〜っ!?


『太くなった』どころじゃない! 焼いたお餅がぷくっと膨らむように、左の腹部が膨らんでる!?


 急いで鏡を見ると……間違いない! 明らかに左側腹部が膨隆している!


 お腹に力を入れてみるが、力が入らない。 


 腹筋が……麻痺していた。


 これって……凄く……まずい……よね……。


 私は、お風呂場の鏡の前で、タオルを巻くのも忘れ、呆然と立ちすくんでしまった……。

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