第11話 三大〇〇制覇!?

 左側腹部そくふくぶから腰背部ようはいぶにかけて、まるで無数のアイスピックで刺されたような鋭い痛みが走った!


 この痛みは、今まで私が経験したどの痛みとも明らかに異なる。


 ……さっきミルクティーの代わりに飲んだ『麦茶+ミルク+ガムシロ』のせい!?


 いや、落ち着け私! そんなのが原因でここまでの激痛が起きるはずが無いし、まずは胃が痛くなるだろう。


 椎間板ヘルニアや腰背部の筋肉痛とは位置が違う。


 この位置に存在する臓器は……


 腎臓か尿管!


 ……そして、何の前触れもなく急激に来た痛みから察するに、キドニーカルチキドニー嚢胞チステじゃ無い……


 恐らく『結石』だ。

 

 腎臓は、血液を濾過ろかして、人体に不要な成分を『尿』として排泄する臓器で、尿路を通過する過程で尿に含まれるカルシウムやマグネシウム、尿酸などが結晶化してしまう事がある。 通常は微量なのでそのまま体外に排泄されるが、尿が通る部分には細い箇所があり、そこで結晶が停滞すると、徐々に蓄積して、尿の流れを堰き止めるほどの大きさに成長してしまう。 そして、尿の圧力に耐え切れなくなると、激痛を伴って尿管の壁をジリジリと傷付けながら移動し、やがて体外に排出される。


 ……その痛みは『心筋梗塞』『群発頭痛』と並んで『世界三大激痛』の一つに数えられている。


 この腰痛が結石のせいなら、『世界三大激痛全制覇🎉』になるが、今はそれを喜ぶ(←んっ?)余裕は無い。

(※作者注:正確には、主人公の病気は✕心筋梗塞→〇狭心症、✕群発頭痛→〇副作用による頭痛なのですが、そこはちょっとしたご愛嬌って事でお許し下さい🙇🏻)


 以前、サターン禍でPCR検査システムの限界を超える業務量のために三ヶ月休職し、ついこの前までは『冠攣縮性狭心症』で一ヶ月も休職して、検査室の人たちや墨台さんたちに本当にご迷惑をおかけしたんだ! これ以上は絶っっっ対に迷惑をかけられないっ!


 例え、この命が燃え尽きたとしてもだっ🔥


 私はトイレに行くふりをして、ポケットに忍ばせていた痛み止めを極量一気に飲み込んだ。


 しかし……


 痛みが止まったのはホンの一瞬で、刺すような痛みがすぐに戻って来た(泣)


 ま……まあ仕方ない。 結石で死ぬ事は無いから、このままやり過ごそう!


 ……何食わぬ顔でPCR検査センターに戻り、再び仕事を始めたが、さすがにえある『世界三大激痛』に選ばれるだけあって、耐え難い痛みだ!


 墨台さんが、業務で使うタブレットを持って近づいてきた。


「遥さん、ごめん! このリスト……って、どうした!? スゲー汗!」


 し、しまった!


 もうすぐ秋も終わるというこの時期に、あまりの痛さにひたいから汗が滝のように吹き出していたんだ!


「また、胸が痛いんじゃないか? 無理はダメだよ〜」と言いながら、墨台さんが腕を取り、脈診を始めた。


「いや! 違うんです! 今度は腰なんです!」


 わぁ〜〜💦  しまった! 隠し通すつもりが、つい口が滑っちゃったっっ!


「腰? ぎっくり腰でもやった!?」


 以前、検査センターの五木技師長が勤務中にぎっくり腰を起こして動けなくなった事があった(『本編第5章 痙攣発作 第1話 魔女の一撃』をご参照下さい🙇🏻)が、私は普通に動いたり歩いたり出来るので、ぎっくり腰ではない。


「いや、左に寄ってるし、結石じゃないかと思うんですけど」……と言いながら腰に手を当てた瞬間、触れた部位を起点として電気が走ったような、この世のものとは思えない程の激痛に襲われ、思わずその場に座り込んでしまった!


 ……朦朧とした意識の中で考えた……


 これ……もしかして、結石じゃ無い?


 じゃあ……一体、何〜〜!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る