第10話 『泣きっ面に蜂』!?

 退院してから約一ヶ月……院長から、やっと職場復帰の許可が下りた。


 サターンウイルスの猛威が落ち着き、PCR検査センターは閑古鳥が鳴いているので、てっきり町野中央病院の検査室に戻れると思っていたのに、なぜかPCR検査センター勤務を継続する事になった。


『もしかしたら検査室の人に嫌われてる?』と悲しい気持ちになったが……


 人事の穂上ほがみさんから、検査室の人たちが、何度も何度も病院側に私の検査室復帰を掛け合ったくれたにもかかわらず、辰巻部長から「健康推進課わたしたちの新しい業務には、遥さんのスキルが是が非でも必要なのです!」との言葉に押し切られる形で、私の出向継続が決まった……と聞かされた。


 しかも、検査室の人たちは『健康推進課の業務が軌道に乗ったら、今度こそ、必ずはるかを 検査室に戻す』という条件は絶対に譲らなかったそうだ。


 こんな私を、皆さんがそこまで推して下さっていたとは……


 その話を聞いた時は思わず涙が溢れた。


 そんな理由わけで、再びPCR検査センター勤務が復活したのだが……。


 困った事に


 頭 痛 が 治 ま ら な い (泣)


 前回も言ったが、院長の話では、身体が血管拡張剤に慣れれば自然に頭痛も落ち着く……との事だったが、ぜんぜん、慣れる兆しが無い!


 PCR検査センターでは、当然、墨台さんが心配してくれている。


「このに関しては急ぐ必要は無いから、とにかくゆっくり治してね」……と言いながら、ペットボトルの麦茶を差し入れてくれた。


 ……私が無類のミルクティー好きなのを知っている墨台さんが、なぜ敢えて『麦茶』を差し入れてくれたのか……?


 実は、紅茶やコーヒーに含まれているカフェインは交感神経を刺激し、心拍を上げる作用があり、私のような『冠攣縮性狭心症』の人には禁忌とされている。


 これが私の人生の中で一番辛いのだが、文字通り、命には変えられない(泣)


 PCR検査センター……と言うより『健康推進課』の新たな事業に関しては、また別の機会に語らせて頂くが、結構頭と眼を駆使する仕事で、それなりに疲労が溜まる。


 こんな時のミルクティーは最高の癒しなんだけどな……。


 ……! そうだ!


 この麦茶に、ミルクとガムシロ入れたらどうなるかな?


 思い付いたら即実行! 早速調合してみると……


 ま、まあ、飲めなくは無いけど……美味しくはないな。


 ……そんな事をして複雑な表情を浮かべていた私を、見て見ぬ振りしていた墨台さんが「ぷっ」と吹き出した!


 は、恥ずかしい……。


 私も思わず照れ笑いして、久しぶりにPCR検査センターに明るさが戻って来た気がして、ちょっぴり嬉しかった


 ……の だ が !


 今年の私は一体どうしたと言うのでしょう!


 今度は……


 こ、腰が痛い!?

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