第9話 沈黙
「 す! 隅 台 さ ん っ (怒)」
うわっ! 緊張し過ぎて、怒ったような声が出ちゃった!
……まずい! 今のタイミングでこの声だと、墨台さんの『良心の声』を私が怒っているように勘違いされてしまう!
案の定……「
私は「ごめんなさい! 違うんです!」……と、誤解である事を謝罪し、改めて墨台さんにお伝えしたいことがある……と告げた。
私のただならぬ様子に異変を感じたのか、墨台さんは硬い表情で私を見上げている。
私は『懺悔』を始めた。
「……私が復職してから、検査数がかなり減ってしまいました。 このまま検査依頼が来なくなって、病院の売上もどんどん下がって……そのうち、私たちが必要無くなる日が来るかも知れない……そう思ったら……」
「……」 墨台さんは眉をひそめ、重苦しい表情のまま無言で聴いてくれている。
「……私……医療従事者として
墨台さんは何も言わず、私の様子を見てくれていたが、落ち着いた頃合いを見計らって、私の好物であるミルクティーをそっと渡してくれた。 そして、慈悲深い声で……
「遥さん……俺も辰巻さんも、遥さんの
……ん?
「……ゆっくりで良いから、
……え? え!?
「大丈夫! 『辰巻グループ健康推進課』の絆は、簡単に
あ〜! またまたドジったぁ(泣) 私の言い方では『とんでもない事をしでかした』と誤解される!
「あ! いや! 違います違います! 何もしてません! 悪い事はしてません!」
私は両手をブンブン振り回して否定した。
「へっ? 何か不正をやっちゃったんじゃ無いの? 『水増し請求』とか『
「そんな恐ろしい事、私には出来ません! そんな事するくらいなら死んだ方がましです!」
墨台さんが、大きなため息と共に、力が抜けたように机に寄り掛かった。 そして……
「……良かった~! 遥さんが犯罪行為をする筈が無いのは判っているからこそ、一体何をやらかしてしまったのか、本当に心配だったよ~」 ……と言って、微笑んでくれた。
「すみません……誤解を招くような言い方になってしまって……」
「……で……『医療従事者として
……さっき墨台さんに『生真面目』と褒めて戴いたのに、それを根底から覆すような言葉を口にしたくなかったが、この機会を逃したら私の罪は永遠に許されない。
「実は……『サターン禍が……続けば良いのに』って……」
……喉が詰まって、これ以上声が出せなかった……。
…………
……長い……長い沈黙が訪れた……。
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