第3話 医療人

「それと、もう一つ……」 辰巻さんが、やや声をひそめて言った。


 ……?


「……これは、俺の口からは言えない事だから伏せるが……いつか機会があったら、ケンタに『何故なぜ、看護師になろうと思ったのか』……と聴いてみると良い。 『墨台 健太』と言うおとこ根本こんぽんを知る事になるだろう……」


 ……謎めいた言葉を残し、辰巻さんが電話を切った。



 以前、町野中央病院の深田先輩が『医療人って、何かのきっかけがあって、この道を選んだやつが多いと思うんだ』……と言った事があった。(本作第2章『病理組織診』第7話『先輩』をご参照下さい)


 病院の色々な人と話をしたが、確かにそのようなかたが多かった。 私のように『漫画家』になる為の『滑り止め』なんてふざけた人はひとりとして居なかった。 


 墨台さんも、看護師……しかも精鋭中の精鋭『DMAT』に選ばれるほどだから、その努力たるや、私には想像もつかない。


 墨台さんの過去……一体何があったんだろう……?



 *****


 後日、町野グループ『健康推進事業部』で、慰労会があった。 その時初めて、墨台さんの過去を聴いた……。



 ……それは、想像を絶する壮絶な過去だった。

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