第9話 秘策
翌朝、墨台さんに、
「グループ内の検体容器も墨台さんが持って行くんですか?」
「うん。 グループ内施設に置いてから、外部に行くようになるな」
「……すみません……。 私が運転出来れば……」……と恐縮していると……
「遥さんが謝る事は無いよ〜! ……それより、昨日、俺が帰ってから前処理とか、ラベル準備までしてたんでしょ!? そっちの方が大変だったよね?」
「いえいえ! これは慣れてる仕事だから大丈夫なんです!」
……本当は、ちょっと寝不足気味で疲れていたが、これから長距離運転&検体採取をしなくてはならない墨台さんに比べたら、私の方がまだマシだ。
「あ、これ……持って行って下さい!」……私は、乳酸菌飲料とクエン酸飲料を渡した。
……墨台さんは多方面の知識があり『ストレスには乳酸菌飲料が効くんだよ』……とか『肩こりには、この体操が良いんだよ』……とか、その時々に応じたアドバイスをくれる。
「ありがとう! じゃ、これ」
……? ……あっ!
……墨台さんも、私が渡した物と同じ飲料を準備してくれていた。
ひとしきり笑い合った後、同じ物だけど交換した。 ……『健康推進課』の『絆』を感じて嬉しかった。
墨台さんが、資材をコンテナボックスに詰めながら……
「……で、遥さん……いよいよ……?」
「はい! 今日という日の為に実証実験を重ねて来た、例の……」
せーの!
「『
いいね!
「ついに、この日が来たか〜」
「はい……その節は、ご協力、ありがとうございました」……と、私は墨台さんに頭を下げた。
『
……RNAは、カオトロピックイオン存在下でシリカへ吸着する性質がある。 ウイルスの溶解や夾雑タンパク質の分解にProteinase Kを採用し、 これにより、
「あ〜! 遥さん、ごめん! 間に合わなくなっちゃうから行くね〜」
……これからが面白くなる所なのに〜!
……し、仕方ない。
「あ、はい! くれぐれも気を付けて!」
墨台さんを見送り、私は昨日採取して来た検体の検査を始めた。
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