第8話 泰然自若

 確かに、自グループ内にクラスターが発生したとしたら大事おおごとだし、一刻も早く結果が欲しいに決まっている。 しかし、既に予約が入っている検査を後回しにしてしまうというのは承服しかねる。


「……明日、墨台さんが検体採取に行く予定になっているんですが、それも変更ですか?」


「いや、検体採取は明日中に済ませて、を遅らせてもらう」



 ……そうなんだ……なら良いや。 


 検体さえ届けば、こちらの体制を整えれば検査可能だ。


「判りました。 では、可能な限り早急に結果報告します。 ……グループ内施設の検体採取は、どなたがやるんですか?」


「グループ内の検体採取は、都合をつけて看護師にやってもらう。 悪いけど、採取容器の準備をお願いできる? 明朝、取りに行かせるから!」


「了解しました。 300名分……予備を含めて、320名分準備します!」


「ありがとう! よろしく!」『ガチャ!』『キーーーーーーン』


 うわっ! 耳がっ! ……穂上さんもそうだが、辰巻さんも忙しい人だなあ。




 ……さて……どうしましょうかね~♪ 


 前処理は今日中に終えるとして、明日の午後には、一気に500名(!)分の検体が到着してしまう……。


 当PCR検査センターの設備は、1回に処理可能な検体数は30検体、検査時間は約90分……単純計算で25時間かかる! しかも、寝ないで作業して……である。


 ……明日中に結果を出すなんて到底無理だ!


 よし!



 潔く諦めよう♡




 は~い! 解散~!


 み な さ ん さ よ 〜 な ら



 ……私は当然クビだろう!


 ……クビになったら、しばらく旅にでも出よう……自分を見つめ直す旅に……。


 この物語も、次回からは……“さすらいの臨床検査技師『はるか』”に改題だ……。


 ……もう、誰も読んでくれなくなるだろうな。。


 ( ノД`)シクシク


 ( ノД`)シクシク


 ……( ノД・)チラッ


 ( ノД`)シクシク





 なんちゃって(笑)


 

 ……さて、読者の皆様は、いつもあたふたしている私が、こんなに呑気にしている事に疑問を持たれるだろう。



 ふっ ふっ ふっ……


 実は、我が『PCR検査センター』には『奥の手』があるんだ!


 ……その全容は、次回明らかになるのだが、まずは、今日やれる事を済ませちゃおう!



 私は、そそくさと明日の準備を始めた。

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