第4話 打て〜!

 いつも陽気な墨台さんも、表情が曇っている。 まさかこんな事で停滞してしまうとは想像していなかった。


 ……もし、ご施設のコンピュータをお借り出来れば名簿の100名や200名くらい一気に入力しちゃうんだけど「貸して下さい」なんてお願いするのは非常識だし、そもそも貸して下さる訳が無い。


 ……ノートパソコンでも持ってくれば良かった……と悔やんでも今や遅し。 片道2時間以上かけてここまで来てるんだ。


 ……何か……何か良い方法は……


 …………


 ……! そうだ!


 ……実は今、ドクターがレッドゾーンに立ち入る際、スマホをジップ袋に入れた状態で、問診とカルテ入力をしている! スマホがあるじゃん!


遠川とおがわさん!」……早速、施設長に声をかけた。


「……少々お時間を頂ければ、私がスマホでカタカナ入力したのち、メール添付するのは如何でしょう? そうすれば、検体シールも印刷できますので、かなりの時間短縮になりますが……」


 ……少々早口に言ったので遠川さんはちょっと考えていたが「……早くなるなら……」と言って、事務員さんを呼び戻して下さった。


 ……私は、字を書くのは苦手だが、スマホ入力には自信がある!


 早速、事務員さんに『オナマエ』を読み上げて貰い、爆打ばくうちを開始した!


 ……あっという間に入力が完了し、当初想定していた時間の5分の1程度の時間で、リストとラベルが完成した。


 あとは、これを検体採取容器に貼り付けるだけでOKだ!


 墨台さんが小声で……「遥さん! お陰様で時間が短縮出来たよ! カッコ良かった〜! イイね!」……と、褒めてくれた。


 ……いつも墨台さんに助けられてばかりなので、少しでもお役に立てたのなら、それだけで嬉しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る