第3話 ザ! 突〇ファイル!

(注・この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません)



 次は、ご入居者さまの検体採取だ。


 ……ただ、ここで問題が発生した。


 あらかじめご用意頂いた名簿を見ながら検体採取容器を準備するのだが……その名簿が……『手書きの漢字』だったのだ。


 ……私達、医療機関の臨床では、通常『カタカナ』を使って検体に記載するのが暗黙の了解になっているのだが、ご施設さまに、それをアナウンスしていなかった!


 盲点だった! 失敗した〜(泣)


 ……追い打ちをかけるように、おひとり目のお名前で、私達の闘志がポッキリと折れた……。


 お一人目〜


『鮟波 勝三大』


 …………


 あいうえお順なら……『アンナミ カッ……ゾウ……タ』?


 答え〜


『ヤスバ カミオ』


 え〜〜!? 鮟鱇あんこうの『アン』じゃ無いの? ……更に言えば『あいうえお順』じゃ無いの!?


『アンナミ カツゾウタ』と『ヤスバ カミオ』


 ……これじゃ、別人……だ。



 遠川とおがわさんが……


「申し訳ございません! わたくしたちは普通に呼んでいるので、読み仮名に関しては失念しておりました……」……と言って、頭を下げてくれた。


「いえ! こちらがアナウンスしておりませんでしたので! 申し訳御座いません!」……と言って、私達も謝罪した。


 遠川さんが、近くに居た事務員さんに「これ、急いでカタカナで書き直して!」……と言って、名簿を渡した。


 事務員さんの後ろ姿を見送りながら……


『あ〜あ……手書きだと読みづらいし……帰ってからワークシートに手入力しなくちゃならないから……時間かかるんだよな〜』……等と考えていた。


 ……私はマンガには自信があるが、字は下手なので、文句は言えない……のだが……


 検査伝票あるあるで『ミ』と『シ』、『ソ』と『ン』、『ヨ』と『ヲ』と『コ』……など、非常に困惑する事が少なく無い。 


 我が『健康推進課』に導入されているコンピュータ ←皮肉 ……は、だ電子カルテと連携されていないので、本院に電話して確認しなくてはならないのだが……特に今回のように緊急依頼の方々は、施設に電話して確認する他に方法が無いんだ。


 今回は、こちらが言わなかったのが悪かった。


 ……次回からは、表計算ソフトにカタカナ手入力して貰った生データを頂くようにお願いするとして……さて、今回の100名以上の名簿を……何か……良い方法は……?


 さあ! 私たちは、この危機を切り抜けられるのか!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る