第4話 二つ返事

 ……この『PCR検査センター』が発足してから、最高で10名に満たなかった検査数が、急に200名! 予備を除いても180名は確実だと言う。


 当センターに導入されている装置は、一度に30名測定可能だが、測定に90〜120分かかる。 事務処理の時間を省いても、9時間以上かかる計算だ。


 ……今、午前10時……。 準備に30分として鷹音たかね市まで、往復4時間。 約200名、検体採取に2〜3時間……か……。


 休み時間を取らずに、よどみ無く進行しても……18時……まあ、今日中の検査は無理ね。


 

 2人で荷物を積み込み、墨台さんの運転で目的の施設に向かった。 ……片道、2時間以上かかる。 慌てても仕方ないので慎重に高速道路を進む。



「……さっきの『たつまき』さん……って何方どなたですか?」


「……え? ……あ! 何かドタバタしてたから、ちゃんとした紹介は無かったんだね。 ……あの人、主語を言わない癖があるし……」……と言って、苦笑いした。


「辰巻さんはね……」


 ……! ええぇぇ〜〜!


 私の! 直属の上司ぃ〜〜!?


 恥ずかしながら、私の上長は『穂上』さんだと思い込んでいた。


 ……ま、まあ……姉妹グループだから、なあなあだし、事務室が工事中だから……知らなくても仕方ないかぁ……あははははは……。←ばか


 ……でも、本人にお会いする前に聴いておいて良かったぁ!


「そ、そう言えば辰巻さん、墨台さんを『ケンタ』って呼んでましたけど、仲良しなんですか?」


「以前の職場で先輩、後輩だったんだよ。 何かと可愛がってくれてね。 俺、違う病院に勤めてたんだけど、辰巻さんが、この『健康推進事業部』の立ち上げをするから来ないか? ……って言ってくれて、二つ返事で転職しちゃたんだ」


「へえぇ〜、良い先輩なんですね〜」


 ……良かった! お子様が5人……いや、もうすぐ6人になる、お父さんの墨台さんが『二つ返事』で転職する程、信用してる上司なのね! 


「あっはっは〜!」


 墨台さんが大声で笑った! 何故なぜに!?


『逆だよ! 逆! 逆! 誰かがちゃんとあの人のフォローしないと、大変な事になるからさあ〜!』


 な! な ん で す と !(汗)

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