第10話 『20』

 …早いもので、あれから、もう20年(!)経った。


 私達は二人の子供に恵まれた。 お姉ちゃんは短大生、弟は高校生だ。


 夫は、プロポーズの言葉通り、私たちを幸せにしてくれている。 いまだに、私の事を『まゆちゃん♡』…と呼んでくれる ←惚気のろけ


 じぃじ、ばぁば は、両家とも元気だ。


 今思うと、あの時、お義母さんが声をかけてくれなかったら、全然違う未来になっていただろう。




 兄は、私が結婚した後、ぐに、長年付き合っていた人と結婚して、今は、高校受験を控えた娘が一人いる。


 幸か不幸か、看護師の『ボス』を『お義姉さん』と呼ばずに済んだ。




 町野中央病院の検査室は、技師長が定年退職し、今は深田さんが技師長だ。 深田さんは、いまだに未婚である。


 都さんは、相変わらずクールだが、「老眼だー」と嘆いている。 娘さんは、もう社会人だ。


 私が退職した後、『澤井さん』という検査技師が入職したものの、すぐに結婚退職してしまった。 その後入った『高藤さん』は、今でも勤めている。


 近江みおは、胃の全摘の為、貧血が悪化し、一度危険な状態になったが、医学技術の目まぐるしい進歩で、奇跡的に助かった。 相変わらず、『サムちゃん』とは、仲良しだ。



 私は、子供たちの手がかからなくなり、更に学費とかで出費がかさむので、今月から復帰した。 分析装置は、かなり新しくなり、使い勝手が良くなった。


 …ただ、臨床検査技師の需要は、AIやロボットの市場参入によって、減少の一途いっとを辿っている。 あと数十年で消滅する職業…かも知れない。


 でも、役目がある限りは、家庭の為、何よりも患者さんの為に頑張るつもりでいる。




 『プルルル〜!』

 

検査室の内線が鳴った。…この電話器は、20年経った今でも、同じままだ。


 私は、気持ちだけは若いつもりなので、2オクターブくらい高い声で、受話器を取った。


 「検査、大林です!」


作者注:まだ最終回ではありません!


 引き続き「臨床検査技師の『はるか』です!」をお楽しみ下さい。

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