第4話 大福

 「お〜、聴いてたぞ! おっどろいたなあ〜」


 私、どうしよう……?


 「『縁は異なもの味なもの』って言葉もある。……近江みおも結婚したし、ブーケも貰ったし……」


 で、でも、仕事中だよ!


「それは関係かろう。 道端で言われたら、むしろ気持ち悪いのでは?」


 う〜ん……。



 その日は、仕事終わりまで、その事で頭がいっぱいだった。 ミスとか無くて良かったあ〜!



 家に帰り、早速、母に相談した。


「とても良いお話だと思うわ。 私は、真優を何処どこの誰に見せても恥ずかしく無い、真面目で、礼儀正しい娘に育てたつもりよ。」と、むいてくれた梨を私の前に置きながら……


「その息子さんが、どんなかたかはわからないけど、真優が『この人なら!』って思える方なら、お母さんは全力で応援するわよ」


 ……嬉しくて、また涙が出た。


 ほんっとに、涙もろくなった〜。



 母に「今日は電話しないで、2〜3日待ってからね」と言われ、その通りにした。


 電話をかける当日、兄貴が心配して早く帰って来た。


 父も早く帰宅して、お土産に『とんかつ』を買って来た。……私は苦笑にがわらいしながら、「受験じゃないのよ〜」と言ったら、「そうだ、大きな福があるように!」と言って、別のつつみの大福をくれた。


 家族4人でお腹を抱えて笑った。


 「もしもし、町野まちの中央病院、検査科のはるかと申します。 ……大林様でいらっしゃいますか?」……と言い終わる前に「お電話、お待ちしておりました! 先日は突然驚かせてしまって、大変申し訳御座いません!」 と、大林さんのお母様は、とても恐縮されていた。


 息子さんのお名前は、『真也しんや』さん。 28歳の事務用品販売会社の社員さん……だそうだ。


 お会いする前に、お互いの写真を交換してはどうか……というお話になり、まず、大林さんのお宅に郵送させて頂き、そのお返事で真也さんのお写真を送って下さる……との流れになった。


 父に話すと、こちらの住所を聴かずに、ご自分の住所を教えて下さった事で、すっかり信用したようだ。


 このIT時代に『写真の交換』って、ちょっと新鮮で、ドキドキしている! 


 ……さて、どの写真にしよう?

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