第4話 VF

 「はい、検査 はるか(カタギ)です!」


 またまた外来から、心電図エーカーゲーの出張記録の依頼電話が入った。 …なんか、私が『姐御』になってから、出張記録が増えた? …のは気のせいかしら?


 ノックして、「失礼します。 検査、はるかです」 …と言って入室したが、看護師はいない。 薬でも取りに行ってるのかな?


 患者さんの寝ているベッドのカーテンを開けると、見るからに状態の悪そうな高齢男性が、早い呼吸をしている。


 通常は、胸を露出させる→右足→他の手足→胸部…の順で付けるが、今回は緊急性が必要と感じたので(『臨床検査技師のかん』ってやつ?)手足にだけ電極を付け、記録を始めた。


 程なくして、心電図の様相が変わり、まるで地震の震度計のような波になった。 同時に、痙攣が始まった! まずい! 心室細動VF


 「先生!!」


 私は心電計を止める事も忘れ、記録紙を千切ちぎって先生に見せた。


 先生は返事もせず、体外式除細動器AEDの準備を始めた。 丁度ちょうど帰室した看護師も、黙々と先生の補助をする。  …ここからは、救命措置だ。検査技師私たちの出番は無い。 手足の電極を早急に外して、検査室に戻った。


 …良くドラマで、心電図モニターをて、心電図がフラットになった患者に体外式除細動器AEDを使ったら、心臓が再拍動して、「ふぅ、生き返ったぜ」…とかなんとかドクターが言ったりするシーンがあるが、あれは大いなる誤りだ。


 心停止した人に電気ショックを使って生き返るのなら、葬儀屋さんは要らない。 


 『体外式除細動器AED』はあくまでも『細動』を『除く』為の装置だ。


 ちなみに、現在の『体外式除細動器AED』はAI技術が飛躍的に向上しているので、自動で『除細動』が必要かどうか判別してくれるので、疑わしい患者さんには、躊躇なく使用して良い仕様になっている。


 …先生の適切な措置で、患者さんは一命を取り留めた。 私も、少しだけはお役に立てたかな? …と、少しだけ自信がついた気がする。


 …とは言え…やっぱり、『姐御』はめて欲しい…。

  

 

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