第13話 嗚咽

 「…息子さんは、お父さんがCAAだって判った時点で、もう助からないって覚悟を決めてみたい」


 結局、三井先生の説得で、これ以上の延命治療は行わない方針になったらしいが、お嫁さんは最後までそれに反対していたそうだ。 


 …更に、念書に署名した息子さんをなじり、『こんな冷たい人と、暮らしていけない!』と離婚まで口にしたと言う。




 …知識があるだけに、冷酷に見える判断をして、愛する家族から『冷たい人』と後ろ指を指されてしまう。 まさに『知恵の実』を食べたために、背負ってしまった『原罪』の重さだ…。




 それから程なくして、森さんはこの世を去った。意識が戻ることは無かったが、苦しむ事も無く、家族に見守られて逝かれたという。 


 息子さんは、お母さんや奥さんに見付からないように、隠れて大声で泣いていたそうだ。 お父さんの病名が判ってから、亡くなるまでのあいだ、どれ程つらい思いをしてきたか…。


 後は、遺されたご家族が、健康に、仲良く暮らせる事を祈るだけ…だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る