第12話 同業者

 その日の夕方、手術室の村田師長が、輸血伝票の控を持って来てくれた。


 「森さん、どうでした?」と私が聴くと


 「奥さんたちと息子さんの意見が別れちゃってね…」


 …森さんの奥さんは、やはり50年以上、一緒に過ごし、息子さんも1人しか居ないので、これで旦那さんが居なくなったら、どうして良いかわからないから、どんな状態でも良いから生きていて欲しい…と言ったそうだ。 …お嫁さんも、延命治療を望んだらしい。


 しかし、一人息子さんは、意識が戻る可能性は無いから、これ以上の延命治療は無駄だ…と主張したらしい。


 それを聞いた奥さんが激怒して、喧嘩になってしまったそうだ。


 「息子さんの言ってる事が正しい…と思うけど、奥さんにとっては、癇に障ったのかもね」…と村田師長が言った。


 私も、息子さんは、ちょっと冷たいかな。 …と思った。 一番つらい筈の奥さんに、そんな言い方したら『お父さんを殺せって言う事!?』…って怒り出すかも知れないよね。


 「息子さんは、何をしてるかた何ですか?」といたら、師長が私を、手のひらで指した…。


 「け、検査技師…ですか!」


 

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