第5話 張り込み

 その晩、兄が帰るのを待って、例の件を相談した。 兄は、二つ返事でOKしてくれた。

 

 「可愛い妹の頼みなら、断るわけにはいかないから…な」…と言うが、兄貴もそろそろ年貢を納めたいお年頃としごろだ。 下心がないと言えば嘘になるだろう。


 そんな兄貴に朗報! 『むろさん』っていう、ピッチピチの乙女を紹介してあげるね! 



 兄貴が休日の夜、実習生を取り締まる作戦を決行した。


 20時30分…看護学校が見える駐車場で兄と待ち合あわせ、時計の時間を合わせる。

…3.2.1.今!


 20時40分…イヤホンマイクのチェック


 20時50分…ボスからのLINE。 ボス、他2名は、授業を終え、病院寮に帰るそうだ。


 20時58分…ボスたち3名を目視…。


 21時05分…多数の生徒が一度に下校し、誰が誰だか、全く判らない! ドラマで良くる『発信機』を買わなかった事を後悔した。


 21時20分…ボスからのLINE。 幹線道路沿いを歩く津田さんと、実習生の金井かないさんを発見…との連絡。 二人は、既に私服に着替えているらしい。

 二人の服装が良くわかる写真が届く。

 この写真は、兄貴のスマホと共有した。


 兄貴の自動車で、ボスのいる場所まで移動する。


 21時32分…ボスと合流。 兄貴にボスを紹介する。 …兄貴は何かを期待していたようだが、想像とのギャップに、しばし意識を失った模様。

 なお、津田さんたちの尾行は、完璧な変装をした私がやろうとしたが、何故か兄貴とボスに、必死で止められた。 折角せっかく、この滅茶苦茶暑い時期に、中折れ帽と襟が立つトレンチコートを買ったのに…。


 21時55分…兄貴から電話。 津田さんたちが、夜間営業の接待を伴う飲食店が立ち並ぶネオン街に入って行ったとの事…!


 …ここから先は、大人の時間だ! ボスには寮に帰って貰い、後は私と兄が何とかする事にして、私は…歓楽街に向かった…。

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