「検査、遥（はるか）です」

……内線に出ると「検体、多過ぎ〜！　取りに来て〜」と、外来処置室の長谷（ながたに）看護師からのＳＯＳだった。

　検査室を出て処置室に向う。

……外来待合は、まだ人がたくさんだ。　今日は残業だな……。

　検体ラックは、カラフルなキャップが付いたスピッツが山になり、入りきれずに輪ゴムで留めてある物もあった。

「うわっ」と、思わず声が出た。

「凄いわよね。　こんな時間まで電話する暇無かったもん」　

　……ですよね……。

「取り敢えず、これだけ持って行きますね」と言って、ラックを手にして検査室に戻る。

「うわっ、凄（すげ）っ」検査室で、深田先輩もボーイッシュに驚いた。そして……

「遥（はるか）……」　

「はい？」

「トイレ」　

「……は？」

「ト、イ、レ！」　

「……あ、どうぞ、ごゆっくり……。」

「違う！　尿（ハルン）！」

　あ！！

　これだけ大量の採血があるって事は、尿（ハルン）検体も大量に提出されてるって事だっ！

　尿（ハルン）ラックを手に、猛ダッシュで外来のトイレに向う。

　「あたしも行く！」……深田先輩も両手に尿（ハルン）ラックを持って、一緒に来てくれた。

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