第4話 人道的見地
検査室で一人になって、ちょっと考えた。
ドクターは、
しかしそれは、あくまでも患者さんが協力してくれる事が前提だ。患者や家族の協力を得られないなら、治療が始められない。だから、必死で説得するし、それでも
ただ、視点を変えて、さっきの木村さんの立場で見てみると、輸血によって命が助かったところで、自分や家族の体内に、悪い血が入っている…という考えがある以上、本人も、家族も、生きるより遥かに辛い人生を送る事になるかも知れない……。
どっちが患者の為なのか? そもそも人道的見地からすると、本当の正解はどっちなんだろう……何だか、わかんなくなって来た〜。
……と思った時、染谷師長が入って来た。
「ありがとう。 お疲れ様ね。 木村さん、無事、転院したよ」
私は「良かったです。 師長もお疲れ様でした。」と言いながら、ペコリと頭を下げた。
染谷師長は、本当に疲れた〜って顔で苦笑いして
チョコパイは大好物だ。ありがたくご馳走になります!
「あ、師長……」
「ん?」
「もし、師長が木村さんと同じ立場だったら、どっちを選びますか?
「あたしは、ぶん殴ってでも輸血させる!
うそ〜!
「嘘よ。 ……ただ、今の答えは、あたしが看護師だから言える事。実際に木村さんと同じ考え、同じ立場なら、どうしたか……それは、全く見当がつかないわ。 そう言う
「私も、ぶん殴ってでも輸血させます! だって、血液が勿体ないから!」と、ちょっと強がって言ってみた。
染谷師長は、大笑いしながら「検査さんらしい意見だね! 『いっそ清々しい』わ! 今度、あのケチンボ院長に伝えといてあげるね!」
いや、それは困ります……。
……時計を見ると、間もなくAM4時……。 一度帰って、シャワーでもしたい。
「では、
「それが良いね。 あたしもこれからちょっとだけ仮眠するわ」
一度検査室を出た染谷師長が、回れ右して、「そうそう! 言い忘れてた」
……なんでしょ??
「ブラ、した方が良いわよ! 結構……ポチが……ね!」
わ、私は真っ赤になって胸を隠した。
「あははは! 若いって健康的で良いわ。 元気貰ったよ。ありがとさん」と言って、手を降った。
私は、白み始めた空の下、人目を忍んで家路を急いだ。
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