4話
亮介さんにおやすみの挨拶をした後、私も部屋に向かった。
「ここが亮介さんがいつも使っているベッドか〜!」
私はそのままベッドにダイブする。
ベッドに横になった瞬間、亮介さんの匂いがしてきた。加齢臭でもなく、かといって香水の様な匂いでもなかったが、どこか安心する匂いだ。
安心したら、急に実感が湧いた。
……お父さんとお母さんって、死んじゃったんだよね? 最初聞かされた時は、何かの間違いだと思ってた。私を驚かそうとして嘘の情報を教えてるんじゃないかと思ってた。
……先生がそんな大事なことを冗談で言うわけないなんて事はわかってる。わかってるけど、信じたくなかったんだ。
病室のベッドで横になっているお父さんたちを見た時でも、ほんとはドッキリなんでしょ? なんて思ってた。そう思わないと正気を保っていれなかった。
「……お父さん、お母さん。どうして私を置いていったの? どうせなら私も一緒に連れてってよ」
……もっとお父さんたちと話したかったな。もっともっと私の成長を見守ってて欲しかったな。
……これで亮介さんにまで捨てられたら、私は独りぼっちになっちゃう。捨てられない様にいいこちゃんを演じないと。
そんな事を思っていると、扉が開く音が聞こえた。
「お、おい。大丈夫か?」
「へっ? 大丈夫ですよ?」
「じゃあなんで泣いてんだよ。廊下まで泣き声聞こえてきてたぞ?」
そう言われた為頬を撫でてみると、確かに湿っていた。
私は無意識のうちに泣いてしまっていたみたいだ。
「な、なんでもないですよ?」
「嘘つけ。何があったんだよ?」
「……両親が死んだって事を改めて実感したんですよね。そしたらなんで私は生きてるんだろうって。それに、亮介さんに捨てられない様にいい子ちゃんにならないとなって」
そんな事を言ってると、急に亮介さんに抱きしめられた。
「……愛咲は生きてていいんだ。生きる理由がないのなら、今度は俺のために生きてくれ」
「……うん! なら、今度は捨てられない様にいい子ちゃんになるね」
「別にいい子ちゃんになる必要はない。俺から手放す事はないからな。そこは大丈夫だ」
「ほんとにほんと?」
「ほんとだよ。安心してくれ!」
「……うん!」
「そんじゃ、そろそろ寝るか。おやすみ」
そう言って出て行こうとする亮介さんの袖を私は無意識のうちに掴んでいた。
「ん? どうした?」
「……もう少し、一緒にいて欲しいです」
「お、おう。わかった」
そう言って横に座ってくれる亮介さん。しかも私とちょっと距離をとって座る亮介さんがちょっとおかしくて笑えてくる。
さっきまであんなに私のことを抱きしめていたのに、急に距離をとるんだもん。笑うなっていう方が難しいよね。そのあとはお互いあまり会話もなく、無言の時間がつづいた。無言だったけど、それが苦じゃなくむしろ心地よく感じた。
……でも、亮介さんの隣は安心するよ。なんだか安心してきたら眠くなってきちゃった。
そろそろ布団に入らないとね。
「……おやすみなさい、亮介さん」
「……おう。おやすみ」
亮介さんが部屋を出たのを確認し、私はそこで眠りについた。
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