第20話「美しき劇の幕開け」
怪盗パピヨンはアラクネの女性である。それはガワだけで中身は天使であるという。
彼女が探すのは七柱の悪魔が封印されていた魔導書。そしてそれを開くことが出来る
ソロモンの子孫だという。
「あの、強欲の悪魔って知っていますか」
男は頷いた。
「あぁ。七柱のうちの一人、強欲の悪魔マモンだろ。嬢ちゃん、七つの大罪を司る
悪魔について詳しく知ってるかい?」
「少しだけですけど…でも、でも悪い人なのかなって…本当は何か理由があって
周りが勝手に呼んでるだけなんじゃないのかなって…ハッ!」
必死に話していたが急に恥ずかしくなってしまいアンジュは頬を赤らめた。
「生まれた頃から悪人の奴なんざいねえよ。悪人が生まれるのは何時も過激な
正義が現れるときさ。悪魔の本来の仕事は人間の心を強くすること。人間ってのは
甘やかすとすぐに堕落していく。悪魔が代償を与えて、甘えることを間接的に罰することで人間が悪になるのを制止する」
「必要悪を演じてるだけ、と言う事ですよね?」
「そうだな。それが悪魔の崇高な仕事だ。が、それを一番快く思わないのは天使だ。
だから天使と悪魔はぶつかり合う」
「…仲良くすればいいのに。人間の事を大切に思ってるのはどちらも同じ
なんですよね」
アンジュの人間側からの言葉に男はフッと笑った。
「嬢ちゃん、名前は」
「アンジュ、アンジュ・リリィです。お兄さんは?」
そう聞くと彼はアンジュとは別方向に進んで手を振る。
「すぐに分かるさ。賢い嬢ちゃん―」
部屋に戻ると先にグリフィスがいた。しかもエキドナも一緒だ。
彼女も含めて互いに情報交換を行った。
「あらぁ、情報交換というか答え合わせみたいだったわねぇ…二人とも
手に入れた情報はほとんど一緒だわ」
「一歩も進みませんでしたねぇ…」
エキドナもアンジュもただ笑うしかなかった。ただ一人、グリフィスは
アンジュの話に出て来た男が気になった。
「オイ、寝てんじゃねえよ。ベルフェゴール」
モコモコのクマを叩き起こす。怠惰の悪魔ベルフェゴールは仕方なく
目を覚ました。
「その男、マモンだから」
「えぇ!?さっきの男の人が強欲の悪魔マモン!?確かに時々、強欲って単語を
強調してた気もするけど…」
タキシードを着込んだ男はマモン本人だという。彼の口から直接悪魔の事実を
教えてもらったのだ。
「アイツも丸くなったもんだね。封印されるずっと前のアイツなら何かを教える
代わりにそれに見合った対価を要求してた」
「対価、ねぇ…聞きたくないけど聞かせてくれる?」
「強欲らしくソイツの資産全てさ。アンジュ、君は彼に気に入られてるんだよ」
グリフィスは時計に目を向けた真夜中。それは夜の12時、日付が変わる頃だ。
その時に聖杯は公の目に映る。
「俺たちも動くとするか」
「そうね。そろそろ式典が始まる時間だわ」
一同は式典会場へ向かう。時は進み、ついに怪盗スパイダーが姿を
現し、強欲な者たち、そして無欲な者達ですら喉から手が出るほど欲する
騎士王の聖杯を華麗に奪いにやってくる。
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