第13話「最も嫉妬心が膨らむ場所」

「それで、何か当てはあるか?」


グリフィスはアンジュに目を向けた。


「レヴィさんが来たって事はこれは確実に、嫉妬が関係してくる

場所で何かがある…それがお決まりのパターン」


レヴィアタンはレヴィ、ベルフェゴールはベル。

彼等の名前の短縮としてアンジュはそう呼ぶのだ。


「嫉妬っていうと才能とかが妬ましいって思うんだろうけど、

何処かあるかな?スポーツとか、そういう大会が開かれる場所」


テンペスタ内にある施設で嫉妬心が最も大きく膨らむであろう場所は

何処だろう。


「才能か…人間側の世界のほうが良いかもな」

「人はみんな、誰かよりも優れていたいと思っちまうからな」


ベルフェゴールの言葉に思わずアンジュは頷いてしまった。


「そうと決まれば、案内役は頼むぞアンジュ」


アンジュたちはテンペスタを出て、人間の街にやって来た。

いつもと変わりない風景。テンペスタと違うのはやはりこの

時間帯に合った空模様が見えると言う事だ。グリフィスは

何やら眩しそうに目を細めている。


「当たっても死にはしないが、少しな…」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。で、当ては?」

「病院に行ってみようかなと」

「病院?」


グリフィスでは無く蛇姿になっているレヴィアタンが

呟く。何故、病院を選んだのか。それにはちゃんとした

理由がある。


「もしかしたら既に事件が起こっているかもしれないでしょう?

病院に入院しないといけないぐらいの重傷を負った人も

いるかもしれません」

「なるほど。それに…」


ばら撒かれた新聞紙を見てグリフィスは納得する。

『悪魔にやられた!?急患続出!』

その病院こそシェーン市立大病院。このシェーン市で最も

大きな病院だ。そこに運ばれてくるのは皆、将来有望な

生徒たちだ。


「あ、あの…アンジュ先生ですか!?」


病院内。松葉杖をつきながら近寄ってくる少女は制服を着ていた。

名門ヒューゲル学院の中等部に所属しており、そこで生徒会長を

していたという。


「私、先生の小説のファンなんです。サイン欲しいです!」

「いいよ。その代わりに貴方の学校で何か起こってるのなら

話してほしいな。貴方の怪我もそれに関係してるんでしょう?」


渡されたメモ紙にアンジュはサインを書いて手渡した。彼女の

病室に来て、アンジュはベッドの近くに置かれている椅子に

腰掛けた。


「学校で突然、喧嘩が始まって…理由を聞いたら―」


それはアンジュたちが探していた嫉妬が関係した事件だった。

最初は小さな自慢話だった。それがヒートアップして何時の間にか

もみ合いの喧嘩になった。突発的にも感じる喧嘩の起き方だ。


「私もそう思ったんです。なんですけど、私も誰かに階段から

落とされて…」

「生徒会長をしてるって言ったよね?生徒会選挙で誰かと競り合ってた?」

「そう、かもしれません。フフッ、何だかアンジュ先生は探偵

みたいですね」


小さく笑った少女の言葉に思わずアンジュは赤面してしまった。

行く場所は決まった。次はヒューゲル学院。実はそこに

行ったことがあるのだ。電話をする。


「学院長先生、お久しぶりです。アンジュです」

『まぁ、久しいですねアンジュ先生。どうされたんですか?』

「学校内を見回っても構いませんか。次の小説の舞台を学校に

したいんです」

『構いませんよ。何時でも喜んで歓迎いたします』

「ありがとうございます」


目的地は名門学校。そこには恐らく嫉妬の悪魔を騙る

堕ちた天使がいるはずだ。

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