第12話「悪い天使」

ベルフェゴール曰くレヴィアタンは舎弟らしい。


「彼の説明は信じなくても良いと思うよ。やるときはやるタイプなんだけど

ホントに何もないときはヘタレなんだよ、レヴィアタンは」

「ヘタレ…嫉妬の悪魔なのに?あ、嫉妬だからこそヘタレなのか!」

「ん?どういうことだ」


自己解決したアンジュに対してグリフィスの疑問は消えない。


「ヘタレ、何をやっても上手く行かないとかって考えると色々な事が

器用に出来てしまう人の事を当然嫉妬するでしょう?」

「あーそう言う事か。はいはい…」


何事も上手くできない故の嫉妬。そこから来ているのだろう。

嫉妬心を糧に力を増すのがレヴィアタンらしい。実際、そういう悪魔が

七柱にいる。レヴィアタンと憤怒の悪魔。


「でも、まだ実害はない?」

「目だった報告は上がっていない。先の出来事では色欲らしい生物の

生殖本能、つまり恋心を弄んだ事件だった。つまり~…?」


アイビスはアンジュに目を向けた。


「つまり、嫉妬心を煽って事を大きくしちゃおうって事かも?」

「そう言う事です。その嫉妬心が顕著に表れる場所は人が多く存在する

場所だ」


更にそういった心を煽るのが簡単なのは人間だという。

彼らは恐らくこの町でただ一人の人間であるアンジュを狙うだろうと

いうのがアイビスの予想。


「そんなメンドクサイことをしなくても良いんじゃない?」


ベルフェゴールは素早く手を伸ばす。掴んだのは蛇だった。

アンジュは驚き、思わずグリフィスの背後に隠れる。


「なんだ、蛇は嫌いか?」

「ちょっと苦手」


ベルフェゴールの問いかけに頷くアンジュ。にしても蛇がこの家に

潜んでいるとは…。ベルフェゴールはこの蛇を睨む。蛇に睨まれた蛙、という

言葉があるが睨まれてビビっていたのは蛇の方だった。


「さっさと姿を現さねえと、鱗剥がしの刑にするぞ…レヴィアタン!」

「えぇー?」


慌てて姿を現した青年は顔を真っ青にしていた。


「ほ、ほら!現したから鱗はがしだけは勘弁して!!」

「えぇー…」


ベルフェゴールもアスモデウスも少なからず七柱の悪魔らしい迫力はあった。

只者ではない気迫という物だろうか?でも彼からは、レヴィアタンからは

どうにも感じられない。


「だ、だって、ベルフェゴール君が怖いんだ…本当に怖いんだよ?!」

「うるせー。その口を有刺鉄線で縫い合わせても良いんだぞ?」

「むゥッ!!」


レヴィアタンが口にチャックをした。


「…こうやって素直に姿を現すんだから、多分事件は起こらないだろうな」


アイビスの言葉に全員が頷いた。

本人すらも何度も頷いていた。


「恐れられてはいるんだろうけど、別に僕たちは進んで悪事を

するつもりは無いよ」

「じゃあ天使が勝手に悪魔の名前を騙って悪さをしてるってことですか?」

「当たり前だろアンジュ。何も言わずに堂々と悪事をするような奴なら

俺もアスモデウスもお前とこんな風に会話してねえよ」


ベルフェゴールは呆れたように言った。

その通りだ。


「天使を追い払うことに心血を注いでいけば自然と七柱の悪魔に

会うことも出来るかもしれないな」



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