第9話「堕天使ザドキエル」
アスモデウスとベルフェゴールは屋上に上がる。
そこに立っていたのは天使の羽を持つ女。しかしその羽は真っ黒。
女の頭には天使の輪があった。それも今では鈍い金色。
「汚らわしい悪魔共が…神聖なこの場所に足を踏み入れるなんて」
「同類だろ。天使ザドキエル。神聖な天使様が堕落して堕天使に
なってるなんてな」
マゼンタ色の髪はカモフラージュのための変装。本来は淡い緑色の
長髪を持つ女天使だ。
「怠惰を司るベルフェゴールに、色欲を司るアスモデウス…ちゃぁんと
復活できたのね♪」
「…ということはお前が魔導書を外に持ち出したのか」
ベルフェゴールの言葉にザドキエルは笑った。
「そうよ。誰でも良かったんだけどぉ、やっぱりあの子の家に
置いて正解だったわぁ。あの子以外は魔導書は開けないのぉ」
あの子、アンジュの事だ。アンジュは何かしらの体質がある。
本来なら滅多に開かないはずの魔導書が開いたことは封印が
弱っていたという原因も一つあるだろうが、アンジュにも少なからず
関係があるようだ。
「ベルフェゴール、アスモデウス」
そこにグリフィスたちが駆け付けた。ザドキエルはアンジュに目を向ける。
未だに不気味な笑みを浮かべている。
「フフッ、良かったわぁ。貴方には生きて貰わないと困るのよぉ。
私たちの計画に必要な鍵だから」
「鍵…?それに私“たち”って事は、複数人が絡んでるって事ですよね」
「オイオイ、まさか天使様が揃いも揃って悪巧みか?」
嘲るようにベルフェゴールはザドキエルを挑発する。それには乗らない相手。
彼女は羽を広げた。
「全員揃ったのなら、丁度いいわ。私が直々に罰を与えてあげる」
「ちぇっ、上から目線かよ」
ベルフェゴールの言葉にザドキエルは反応を見せる。
「どういう意味?」
「怠惰と色欲…天使の癖に知らねえのか?」
「はぁ?」
ベルフェゴールが不敵な笑みを浮かべていた。
「お前、アスモデウスの名を騙ってベリアルに洗脳を掛けただろ」
「えぇ、罠にかけるのは簡単だったわ。色欲の悪魔の名前をちらつかせたら
すぐに飛びついて来たもの」
彼女は自慢げに語っている。つまりは人に化けて、相手を騙し洗脳した。
そう考えることも出来る。
「じゃあ折角だから答えてもらおうか。賢いアンジュちゃんに」
「私ですか?」
ベルフェゴールが指名したのはアンジュ。ベルフェゴールは問題を出す。
「色欲について簡単に説明しろ」
「色欲って言葉の意味って事ですよね?色欲って要するに性的な欲求の事。
どんな生物も生殖して数を増やしていくから持っていて当然ですけど
やり過ぎも良くないって事ですね」
「そういうこと。まさか100で答えるところを150で答えてくるとはね」
性的な、つまり男と女の関係。七柱の悪魔はそれぞれ何かしら力を持っている。
アンジュは魔導書に何かヒントが載っているのではと考えて本を開く。
開いた時のページは覚えている。
「やっぱり、あった…!」
濃いピンク色の文字が綴られている。それはアスモデウスについての内容。
アンジュはすぐに読み解いた。
「もう術にかかってるんだ!!」
アンジュはザドキエルを指さしてそう叫んだ。
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