第7話「地下へ進む」

「俺は地下に行くよ。アスモデウスとベルフェゴールは黒幕を」


グリフィスは彼らにそう言った。自分では恐らく七柱の悪魔に匹敵する

力を持つ相手には勝てないだろうという冷静な判断の下、考えた事。


「分かったよ。君も気を付けてね。ベリアルは一定の条件下では

それなりに強いから」

「お前の“それなりに”もあまり正確に把握できないんだがな…」


それぞれ別行動となった。グリフィスは地下を目指して歩みを進める。

数分歩いた頃にアンジュが目を覚ました。


「まだ、無理はするなよ。暫くは安静にしてろ」

「えぇー、大丈夫なんですけど…」


その言葉を聞かずにグリフィスは再び歩き出した。ところどころ穴が空いた

木の廊下。


「一体、私は何があったんですか?」

「サソリの毒にやられてた。アスモデウスが解毒して、今のお前の

体には全く毒は無いけどな」


グリフィスはアンジュを下ろした。アンジュは体を伸ばしてから脱力する。


「この辺りに階段があるはずなんだが…さて、仕掛けは何処かな」

「こういう時って大抵、何かが動いて下に階段が続いてるんですよねぇ」

「動かしてください、って事か?」

「え、えへへ…」


アンジュが指差したのは部屋に似つかわしくない白い像。華奢なアンジュでは

動かすことが出来そうにない。グリフィスは少し力を入れて像を動かした。

すると予想通り下に伸びている階段を見つけた。灯りの類は無い。


「俺が先を歩く。足元には気を付けろよ」

「はい」


二人は階段を下る。グリフィスはスイスイ下っていくが、アンジュは一段ずつ

確実に、少しずつ降りる。それを見兼ねたグリフィスは手を差し出した。


「足を滑らせても俺がどうにかしてやる」

「滑らせる前提…」


その手を握り、アンジュは再び歩き出す。降り終えると狙ったように

動き出した骸骨たち。彼等は何かしらの武器を握っていた。


「うわっ、こっちに向かってきますよ!?」

「分かってる。少し下がってろよ」


グリフィスは彼女を後ろに下がらせる。自身の血を使った術。

地面を滑るように広がった血が次々に骸骨を呑み込んで破壊する。


「相手もこっちに気付いたらしい。少し急ぐぞ」

「はい!」


グリフィスの後を追うようにアンジュも駆けだした。

そのあとを密かに追いかける蝙蝠が一匹。それはベリアルと言う悪魔の

もう一つの目。ベリアルは地下にグリフィスたちが足を踏み入れた時から

追跡していたのだ。

人間なんて何人も見て来た。全員同じだ。欲があり、少し良い物を

チラつかせてやればすぐにでも飛びついてくる。


『こっちの方が幸せでしょう?』



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