第6話「黒幕の屋敷」
「…って、アスモデウスさんも愛くるしい姿に変身しちゃうんですね…」
鞄からひょっこり顔を出す二頭身のクマとヤギ。
ベルフェゴールとアスモデウスだ。
「こっちの方が力が抑えられるからね。普通にウロチョロしてたら
目立つでしょ。さて、賢いアンジュちゃんに問題です」
「突然…!」
「僕はヤギ、ベルはクマ…どうしてでしょーか?」
アスモデウスがカウントダウンを始めた。慌てて、考えて
答えを出した。
「七つの大罪と関連している動物!怠惰はクマとかウシ。色欲は
ヤギとかウサギですよね?」
「ピンポーン♪大正解!流石だね」
小さなクイズ大会をしている途中でグリフィスが咳ばらいをする。
はっちゃけた空気は一転して真面目になる。
「アスモデウス、ベリアルと言う悪魔は知っているか」
「知ってるよ。僕の配下だからね。まぁ、そんな強くないけど。
普通なら吸血鬼でも退治できちゃうんじゃないかな?」
「そうなんですか?」
アンジュは目を丸くする。
「ベリアルは確かに強いんだが想定外に弱い。自分が考えた事以外の
出来事が起こればすぐにボロを出す。だがなぁ…主人と別の奴を
間違えるとはなぁ…」
「それだけそっくりな人だった、とか?」
「姿は分からないけど、声とかが聞こえて反応したとかね。それと
考えるなら洗脳の類に引っかかったというのもあり得る」
洗脳。それにかかりやすい人もいるのだ。勿論、引っかからない人は
引っかからないんだろうが…。
「僕の名前をちらつかせて彼女の精神を揺さぶったんだろうね。僕の
大切な部下に手を出すなんて、ちょっと許せないかな」
「なんでだろう。ちょっと、て言ってるのに全然“ちょっと”って感じが無い」
「僕と並べるだけの力を持っていると言う事かな。そうなると限られてくるけど」
アンジュも相槌を打つ。多分、同じ存在を考えているだろう。
悪魔に匹敵する、悪魔と相反する存在。だが可笑しい。そんな存在が
悪魔を騙り、悪さをする。
「ヒントが少ない。直接会えば分かるだろう。こっちだ」
グリフィスが先を歩き、屋敷を見つけた。見覚えのある白い花。
苔むした古い屋敷。それを眺めていたアンジュの視線が霞む。
その直前に僅かな痛みを感じていた。視線を落とす前に調子を
悪くしたのだ。異変に気付き、グリフィスはアンジュの体を軽く揺する。
「コイツか…」
腰のホルダーから折り畳み式のナイフを取り出し、サソリに突き刺した。
サソリの毒にやられ、アンジュの意識は混濁していた。
「僕の許可も無く、こいつを外に放ってるのか。ベリアルには説教を
しないとね」
人型に戻ったアスモデウスはアンジュの足首に噛みつく。そして何かを吸うと
口を離した。
「毒は全部吸ったよ。僕の作った毒だから、僕は耐性があるし、前提として僕の
血の一部だ」
「そんな危険な生物、しっかり管理しておけよ」
「管理してるさ。厳重にね。誰かが解いちゃったんだろうけど」
「駄目じゃねえか」
ベルフェゴールの冷静な言葉にアスモデウスは少し目を逸らせた。
未だ意識が戻らないアンジュをグリフィスは背負い、歩き出した。
屋敷の中に入る。入った瞬間に鍵は閉められてしまった。
「ここで殺してやるってか?」
「逃がす気は無いって宣言してるようなものだね」
彼らは先に進む。その様子を見てほくそ笑んでいる女がいた。
彼女こそがアスモデウスの名を騙りベリアルも操って事件を
起こした張本人だ。
「運が良いです事。でも、所詮は人間…ね」
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