第一章
私、桜井希実!
その辺にいる、フツーの中学一年生!
私は今、二年前からずっと憧れていた場所にいるの。
そう、西園寺学園の体育館!
小学校の時、西園寺学園の文化祭で演劇に出会ったの。私、それを見た瞬間に絶対演劇部に入って昔の私みたいな人を救おう! って思った。
だから、この部活見学のある放課後に体育館の前にいるの。舞台は体育館にあったから演劇部も体育館で練習してるでしょ、ってね。
でも、わからないな。演劇部についての情報がひとつもなかったの。部活紹介でも他の部活はしっかり紹介してたのに、演劇部はなんにもなかったの。おかしいな。
そうやって舞台袖の前のドアの前。
五分前くらいからずっと深呼吸してドアノブに手を伸ばしてるけど、緊張して手が動かない。
……うわぁぁぁ!
どうしよう、ものすごく緊張する! あの公演で演じていた先輩は今も演劇部にいるのかな? いたらなんて言おう? ずっと尊敬してます? 救ってくれてありがとうございました? ああ、どうしたらいいんだろう!
でも、開けないと始まらない。
先輩にありがとうすら言えない。
「よし! あの……失礼します……え?」
私はとんでもない光景を見た。
私がこんな感じかなって想像してる演劇部と今の舞台袖は、月とすっぽんどころじゃないくらい違っていた。
例えば、一年生で溢れかえっていたって幽霊がいたってこんなにびっくりはしないと思う。
だって、誰もいないんだから。
否、一人いた。ネクタイの色的に同級生かな?
舞台袖の主と目があってしまった。
私はどうすればいいかしどろもどろ。ってかこの人誰なの?
「お前、一年生だよな?」
舞台袖の主は唐突に喋りかけてきた。
とりあえず何もアクションがないのは失礼だし、うなずく。
「演劇部目当てだろ、残念だなお前。別の部活を見学してこいよ」
「……え? てか誰なの?」
驚きすぎて逆に冷静だ。
何いってんの? あんた一年生なのになんで部長面してんのよ!
「俺は
「私は桜井希実……それはいいんだけど、なんでここにいるの?」
柳田くんはボリボリと頭をかき、少し目線を逸らしてめんどくさそうに言う。
私、エスパーじゃないからそんなの察せないからね!
「俺、葵……アネキが元々演劇部で。無理やり入部させれたんだよ。アネキいわく、もう部員がいないんだとさ」
……ん? サラッと言ってるけど結構重要なこと言ってない?
「今年中に五人集まらないと演劇部は無くなるんだとさ。学校の規則で」
ことの重大さがわかってきた。
要するに、あと三人演劇部員を集めなきゃ演劇部は消滅するってこと。
「え、それヤバいじゃん」
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