夢から醒めて。

愛奈

プロローグ

 

 その時の私は、絶望のどん底にいた。


 女の子たちにずっと無視されたり、体操服とか上ぐつを隠されたり……。


 そのころはまだ耐えることはできたんだけど、ある言葉を言われてから、学校に行こうと玄関に立ったら足が動かなくなっちゃったの。足が棒みたいになって、歩けなかった。

 その日の太陽が、やけに眩しく感じた。


 私は、その日から小学校に行けなくなってしまった。


 その数ヶ月後、あんなクラスメート達から離れるために中学受験を決意したんだ。

 そしてあの日、私が気になっていた中学校の文化祭を見学しに行ったんだ。


 その時、出会ったんだ。

 演劇と、「夢から醒めて」と。


 

「そうだ、ここ、演劇部が有名みたいね。そうだ、希実のぞみも見てきたら? 学校の雰囲気、掴めるんじゃない?」


「そうだね、お母さん。行ってくるね」

「お母さんは、ここで待ってるね」


 その言葉にうなずいて、私は体育館に向かった。正直、演劇とか興味なくってぼんやりとしていた。


 ぼーっとしてたら開演のブザーがなった。幕がゆっくりと上がる。


 私はその時、夢から醒めた。

 初めてこの日々の中に、希望を見つけた。

 

 私はその日から猛勉強をして、その中学校に合格したの。演劇部に入ることを胸に。



 これは、西園寺学園に名前を残した演劇部のことだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る