第15話 HADASHi NO STEP☆

 俺とナルミしかいない空間。

 待つしかない時間。

 少しばかりできる余裕。俺は一つの想いを秘めた。覚悟と誓いの想いだ。

「ナルミ、俺と踊ってくれないか」

 あの時は急かされていた。ホシノと踊っているのを見て俺も踊らなければいけないという使命感に追われていた。結局、無理矢理にでも踊らそうとして断られたが、それで良かったと今は思う。

「俺は完璧にならなきゃいけないって焦ってた。お前に完璧を強いていた。けど、ノナミやヨネヅと出会って、それが本当に正しかったのか揺らぐようになった」

 ノナミとハル、ヨネヅとゼンジ。どちらも接し方は俺の思ってたのと違ってた。それなのに今の求めてる理想よりも良いものに見えた。

「お前に俺らしくいればいいって言われた。俺らしさが分からないが、急ぎ足の俺は俺らしくないと思う」

 暗闇の中にいた。ずっと闇の中を迷っていた。完璧になることを諦めれば光ある所に戻れるのに、手放せず闇の中を突っ切っていた。けれども、今はもう諦め光へと戻った。今からがスタートだ。

「あの時ダンスをさせようとしたのは焦っていたからだ。完璧に囚われすぎて無理やり踊らせようとしてた。だから、今度は無理強いする気はない。ただ単に俺がナルミと踊りたい……それだけだ」

 そう。これは決別だ。

 あの頃の俺とは違う。変わった俺の誘いだ。

「はい。これから一緒に……変わっていきましょう。よろしくお願いします」

 ナルミは優しく手を出した。

 俺はその手を握った。弱々しい細い腕だ。握潰さないよう優しく優しく握った。

 初頭学校で習ったダンスは優秀な成績で収めてきた。持ち前のセンスと努力で培った能力で彼女の踊りをリードする。

 ホシノのように素人を玄人のように魅せる技術は全く持ってない。俺は彼のような完璧な人間じゃないし、きっと到底なれない。だが、できない人間なりの必死さがある。

 服もボロボロ。靴すらない。そんな薄汚れた俺達は決して上手いと言えないダンスを踊っていく。

 赤や黄色、藍色の美しい花畑。薄暗さの中にある宝石のような地下。そんな風景の中、俺らは舞う。

 上手くない。けど、必死さが伝わる。その必死さが俺の心が深く染みる。それに答えるように俺も必死に動いていく。より上手く、リードできるように。


 静寂の中、誰も見ていない中で、俺達は必死に踊った。ちぎれた花が宙を舞う。


 いつしかダンスは終わっていて、二人とも花畑の上で寝転がっていた。

 空を舞った花が紙吹雪のように落ちてくる。

「俺は変われるかな……」

「きっと変われますよ」

 鮮やかな花吹雪がとても美しかった。

 きっとこの景色は前までの俺じゃ見ることが景色だ。

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