第20話
蒼君とまた、仲良くなれるなら、
私は思ったことを蒼君に伝えるんだ。
お母さんのように、私を思ってくれること。
蒼君の告白の返事のこと。
始まりの朝はいつもよりも眩しくて、
窓から差し込む光が、まるで、私を包み込んでくれるようだった。
光はいつだって前向きだ。
私は光に背中を押されたんだ。
ー結愛。頑張ってー!
「・・・・・ありがと」
片手でドアノブを掴みながら、私は呟く。
校門を通ると、いつもの蒼君がファンの人達に
囲まれて、歩いている。
今日も、昨日と変わらない優しい笑顔で。
校門に隠れて、蒼君の様子を眺める。
立ち止まっていると、久々の別のファン達が私に視線を刺す。
そうだった。
あの時、蒼君が直球に打ち明けたんだ。
ファンの人達が顔色を失って、
もっと私を憎むようになった。
「・・・・・・」
胸がズキッと痛む。
蒼君の笑顔が瞳に移った時、
蒼君を好きになった。
ずっと、蒼君から元気と優しさを与えられた。
今度は私が蒼君に与えるんだ。
蒼君の夢を笑顔を私が、絶対、守るんだ。
放課後の午後4時の夕日の空は、どこまでも茜色に染まっていた。
私は教室掃除で残ることになり、
次に先生にプリントを届けて、随分と遅くなった。
どうせなら、蒼君と屋上で、語り明かした
かったのに。
「もう。帰っちゃお!」
今日はもう遅いのだ。
時間を無駄にしている必要はない。
玄関から足を出すと、肌に透き通る風が
吹いた。
(明日になっちゃうんだ・・・・・・)
仕方がない。
「そのまま帰るつもり?」
ある言葉を背中から聞こえた。
あわてて振り返ると、むっとした表情を
浮かべた、蒼君が、いた。
「蒼君・・・・・!」
「結愛が早く来てくれないから、もう待ちくたびれたよ」
「え。あ、うん・・・・・?」
「結愛」
私の名前を呼ぶ蒼君の顔に笑みが立つ。
もう、ドキドキして、死にそう・・・・。
ー反則ーっ!!
「お母さんが亡くなったから、あ、蒼君は寂しいの・・・・・?」
蒼君は目を見開く。
「寂しい、だから、お母さんのような優しさが欲しいの?」
蒼君を傷つけるかもしれない。
だが、伝えなければいけない。
「・・・・・・うん」
「ごめんね。なんか、こういう話は私は、得意じゃなくて」
「告白されたときは嬉しかった。でも、私は蒼君の夢が不安だったんだ。そんな大切な夢だから。」
「でも私は蒼君の 短期 の女の子になりたい」
「へ。短期?」
「う、うん!」
「まずは、様子を見てからだよ。だから私は蒼君の夢を守りたい」
「・・・・・結愛ならそう言ってくれると思った」
「ありがとう、蒼君」
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