第三章 推しとの恋

第16話

(どうしよう。避けちゃった!)

玄関で蒼君と会って、挨拶を交わそうとしたが、

昨日の事が頭に残り背中で挨拶を受け止めてしまった。

蒼君と目が会う度、目を逸らしてしまい、

その場から逃げてしまっていた。


「結愛」

「わあっ!?」

後ろから声がして、変な声を立てる。

振り返ると、

「蒼君・・・・」

困った顔を浮かべた蒼君がいた。


怒ってはいなかったが、私のことを心配しているようだ。


「今日、嫌な事でもあったのか?」

「い、いや・・・・」

話しづらくて、わずかな笑みをつくる。

蒼君は私のことが好き、と聞いて、

近づかないようにしている。

クラスのファン達はそれを聞いて、酷く顔色を失っていた。誰かとは流石に蒼君はバラさなかったから、私が憎まれることはなかったが。


蒼君と陸君に同じ好きな人がいる。


ということで、事務所もファン達もパニック事態。

(全国のファンの人たちに土下座したい・・・・・)

心から謝りたい気持ちでしょうがない。

アイドルは皆のもの。

その条を蒼君と陸君は完全に破ってしまっている。


「私、あの・・・・・」

「まあ、少し、察した」

「え?」


「俺が結愛に告白したことでしょ」


(ふあああああっっ!?)

頬が熱くて、火傷しそう。

周りの皆が一斉に振り向く。


あの好きな人は本当に私だった。


(蒼君ってば素直すぎーーーー!!)


ファン達の顔が歪む。

「マジ・・・・!?」

「嘘!」

「夢野さんが好きってどういうこと!」

教室全体が騒ぎ始めた。

青くなる顔でファン達は蒼君に問い詰めて。

男子達は隣のクラスまでに情報提供させようとして。


そして、私は目の前がぼやけてきて、体が椅子から落ちたような痛みを感じた。



暗闇から目を覚ますと、辺りは真っ白なカーテンで覆われていた。

ここは、保健室だろうか。

重い体を起こしてみると、シングルベッドの隣に鞄が置かれていた。


「・・・・そっか。私、倒れちゃったんだ」

蒼君にある意味を持つ告白をされて、

パニック状態になった。

記憶がまだある。


(・・・・・・蒼君)


私、もう蒼君のファンじゃなくなっちゃう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る