第12話

来月には期末テストが控えていた。

暑くじりじりとした夏は、学習方面で使う頭を止めてしまう。

肌に通る風は弱いくらいだった。


朝学習の時間に皆はワークやテキスト

とにらめっこしていた。

テスト期間は部活が中止している為、テスト勉強に集中できるようになっている。

私も苦手な科目を克服しようと

鞄からテキストなどを取り出す。

ワークに目を走らせて、数式を解いていく。


私は数学がどうしてもダメだ。

図形も苦手でよくテストでは、30点の位置を

取り続けた。

今は週1の塾に通っている。

やっと平均点を獲得することができて、

成績は上がり続けている。


「ここの公式って、何だっけ・・・・」

ある問題にシャープペンが止まる。

ここぞという時に頭が回らない。


「結愛。おはよう」

「あ、蒼君おはよう」


ー蒼君は今日もかっこいいな

ネクタイが少しとび出ていて、私はクスッと笑う。


(蒼君は可愛いところもあるんだ)


「結愛、何を勉強しているの?」

「数学だよ。苦手なんだ」

「じゃ。俺が教えてあげよっか?」

「いっいいの!?」

「俺、得意だし」


ー推しとべ、べ、べ、勉強だあ!!!


「どこが分からない?」

蒼君は自分の席に座って私の机に身を寄せた。

顔が近くて、息が止まりそう。


さすがの距離に口が開かないので、

指で問題を指した。


「ああここ?ここは・・・・・・」


蒼君が動かすシャープペンに目をつける。

蒼君の教え方は一から分かりやすくしてくれるから、とても聞きやすかった。


「ーへえ。そういうことだったんだ」

「まあ別のやり方もあるけどね」

「そういえば蒼君に苦手な科目ってある?」

「得にないな」

「ええ!すごいっ!」


(本当にすごいよ・・・・)


それから私は蒼君に教えてもらいながら、

勉強を進めていった。

教科書にノートを重ねて、

胸元でシャープペンシルを片手で握る。


私は何となく理解しているが、眉を寄せている。

蒼君は私の顔に気がづいて、もっと細かく覚えやすさを柔軟してくれた。


すると、チャイムが鳴った。


「あ。もう鳴っちゃった」

「ここまでだな」


蒼君がペンを止めて、自分の机に戻った。

机の中にテキストなどを詰める。


(なんか・・・・・新鮮!)

二人の距離が近づくというハッピーな出来事。


これからもあればいいな。



放課後の帰りは蒼君は忙しそうだった。

どうやら明日の収録のライブの

ダンスレッスンの確認だ。


蒼君の机に私ははっとする。


「こ、これ。蒼君の衣装じゃない!」


ビニール袋に包んである衣装で明日の

収録に着用するものではないか。


「どどどどうしよーーーううう!!!」


嫌な予感がしてたまらなかった。














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