第3話

「マジヤバいって!!」

琴葉が目を丸くして机に拳をぶつける。

私はびっくりして前の席の琴葉に話しかけた。

「どうしたの?」

「結愛っ!」

琴葉があわてて振り向いた。


「ウチのクラスに転校生として 宮崎蒼 が来るんだって!」


蒼君のファンでもない琴葉が興奮している・・・・・。


「ってえええええええええっっ!?」


蒼君が!?

まさかの蒼君が!?

蒼君が私のクラスの転校生っ!?


(私は夢を見ているの?)


だんだん息が荒くなってくる。

息も出来ないぐらいだ。

嬉しいはずなのに恐ろしく感じてしまう。

クラスの皆も琴葉の言葉を耳にして驚いている。


「いっいつ・・・・・なの!?」

「今日だよ!」


女子達は嬌声を上げるばっかりで、男子達は面白がるように目を輝かせていた。


(・・・・・・ということは・・・・・・)


奇跡ではないだろうか。

推しが・・・・・ここに来るのだから。

制服姿で転校してくる。

最高の見ものだ・・・・・!


私ははっと気が付いた。


(握手・・・・できるかも!ツーショットも撮れるかも!そしてそして!)


「かのっ・・・・・・」

と、私は言いかけた。

先生の足音が聞こえたからだ。

そして、その足音と重ねるように他の足音も聞こえてくる。

一瞬で分かる。


ー蒼君だ!!!ー


「皆さん、今日は転校生を紹介します」

ドアから出てきた先生が教卓の裏に立つと転校生を呼び出した。

転校生がドアから入ると皆が目の色を変えた。


宮崎蒼君だ。


(嘘・・・・・・。)

涙がこぼれそうだった。

感動しすぎて今、自分の顔がどうなっているのかは分からない。


蒼君の制服姿がすごくかっこいい。

そして、蒼君はもう

世界一かっこよすぎた。


「宮崎蒼です。これからよろしくお願いします。後・・・・」

胸がドキドキした。


「あんまり近寄ってほしくないので握手とか写真はやめてください」

蒼君はにこりとした。


(・・・・え・・・・え・・・・ええええええええ!!!)


事務所が言ったのだろうか。


(握手とか写真とかダメなの!?)


近寄ってほしくない。

その言葉がクラスの胸を貫いた。


(つっ冷たい!!)


この言葉は蒼君自身の本音だろう。


(蒼君はもっと優しい人だって思ってたけどこんなにクールなの!?)


これは私にとってピンチであった。

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