作戦その三 代わりを見つける

お互いに婚約破棄に至る要因がなければ、第三者を用意しましょう。フィリップの正室にならないと困ってしまう人を見つければ良いのです。


フィリップは誰かを助けるためなら、私との婚約を解消してその人を正室として迎えるでしょう。


でもそんな人をどうやって見つければ良いのかしら。一から探すのは難しそうね。


あの五人の中に、正室になりたい人を探してみましょう。なりたい人がいれば、協力して適当に話をでっち上げれば良いのですから。


とりあえずフィリップの家に行って、一人ずつそれとなく聞いていこうかしら。




「アーニャ、少しお話しませんか?」


まずはアーニャという少女です。話を聞くと、アーニャは五番目にこの家に来たようです。


「アーニャはフィリップの側室なんかで良いの?普通に結婚したいとは思わないの?」


「私は実家を出れただけで満足なのです。結婚だなんて、考えたこともありませんでした。でも、フィリップ様とニーナ様のような夫婦には憧れます!」


「まだ夫婦じゃないのよ……」


うーん、アーニャは難しそうです。もう少し年齢が上で、ガッツがある人の方が良いでしょう。次行きましょう!




「イザベル、ウェンディ、あなた達はフィリップの側室になることをどう思っているの?正室になりたくない?」


なんとイザベルとウェンディは姉妹だったのです。イザベルは私と同い年、ウェンディは二歳年下なのだそう。姉妹で側室って……フィリップってば何を考えているのかしら。


姉妹なら、片方だけ正室になることは望まないでしょうね。望みは薄そうですが、一応話を聞くだけ聞いてみよう。


「フィリップ様には大変感謝しています。結婚後も私達が困らないように側室にしてくださるなんて、感謝しかありませんわ」

「私達は、もともと隣国の出身なのです。もう帰る家もありませんし、この国で暮らせるだけで良いのです」


やっぱり結婚願望はなさそうです。……次行きましょう!




「エミリー、フィリップのことどう思っているの?本当は正室になりたいとかない?」


エミリーは私より少し年上の女性で、五人の中で一番長くこの家に居候していると言っていました。


少し気が弱そうですが、実は子爵の令嬢らしいので一番フィリップの正室に相応しいでしょう。


「ニーナ様、失礼ですが、もしかして嫉妬していらっしゃるのですか?誤解しないでくださいね。私はフィリップ様とどうにかなりたいと思っていません!信じてください!正室はニーナ様、ただお一人ですわ」


嫉妬?!ありえません……ですがこの質問は、確かに嫉妬している人の台詞でしたね。


「そんなんじゃないの。変なこと聞いて、ごめんなさいね」


これ以上話しても、嫉妬しているとしか思われなさそうです。撤収ー……。




「ねえオリヴィア、あなた正室にならない?あなたならフィリップとうまくやっていけると思うわ」


……だんだん聞き方が雑になってきていますが、もう気にしていられません。


「正室ですか?なれるなら、なりたいですねー。ニーナ様、もしかしてフィリップ様との結婚がお嫌なのですか?」


お?これはもしや可能性があるかもしれません。勘づかれているようですが、味方になってくれるのならバレたって構いませんわ!


「実は、私の代わりに正室になってくれる方を探しているの。オリヴィアが代わってくれるならありがたいのだけれど……」


「代わって差し上げたいですが、私、あと一年でここを出ていくのです。やりたいことがあって……だから側室なら問題ないですけど、正室になる訳にはいかないのです。勿論フィリップ様の許可は貰っていますけど」


惜しい……実に惜しいわ。だけど、出て行ってしまうなら仕方ないですね。




あー、私の誰か代わりにフィリップと結婚してくれる人、いませんか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る