作戦その二 悪役を演じる

フィリップに婚約破棄の理由が見つからないなら、私が婚約破棄されれば良いのです。


私に問題があれば、フィリップは愛想を尽かして婚約破棄をしてくるに違いありません。


だけど、どうしたら愛想を尽かしてくれるのでしょう?




そうだわ!意地悪な女になりましょう。あの居候の女性達やフィリップを困らせてやれば、フィリップだって私との結婚が嫌になるはず。


そうと決まれば、まずは連絡なしで訪問しちゃいましょう!


きっとフィリップは困惑するでしょうね。




「久しぶりね、フィリップ。近くを通ったから来てみたのだけれど、寄っていっても良いかしら?」


「ニーナ!あぁ、勿論だとも。よく来たね、さあ上がってくれ!」


……少しは迷惑そうな顔を思ったのですが。どうして少し嬉しそうなのでしょう。


部屋に案内されると、居候五人のうち三人がいました。


ちょうど良いわ、この三人を困らせてやりましょう。彼女達に嫌われれば、フィリップも婚約について考え直すでしょう。


「アーニャ、イザベル、ウェンディ。廊下にホコリが溜まっていたわ。居候しているのなら、使用人に頼らず掃除くらいはすべきよ」


「まぁニーナ様!私たちの名前を覚えていてくださったのですね。ありがとうございます!今から掃除してきますね!行きましょう」


「「そうね。ニーナ様、ご助言ありがとうございます!」」


えぇー……そこ、感動するところなのですか?


三人とも浮かれながら掃除をしに行ってしまいました。どうやら失敗です。




三人が出ていった後、フィリップと残りの二人の居候が入ってきました。


もうこの二人でいいわ。ガツンと嫌がらせをしてやります!掃除はもうあの三人がしているから、お茶でも淹れてもらおうかしら。使用人のように扱ってやりましょう!


名前で呼ばないように注意して……


「ねえ貴方達、お茶を淹れてきてちょうだい」


「「は、はい!」」


あらあら、驚いたかしら?良い調子よ。このまま私が悪い感じに見えればオッケーですわ。


「お待たせしました。あっ!」

「きゃあ!」


二人がお茶とお菓子を持って戻ってきた時、エミリーがオリヴィアの足を踏み、二人が倒れかかってきました。


危ない!


「二人とも大丈夫?怪我はない?お茶はかからなかった?」


とっさに二人を抱きかかえてしまいました。


「ニーナ様、ありがとうございます」

「身を挺して助けてくださるなんて!」


もう!どうして感謝されてしまうのでしょう……こんなはずではなかったのに。


「ニーナ、早速皆と仲良くしてくれているようだね。ありがとう。君は優しいな」


違います、フィリップ。私は困らせようとしていたのです!




どうしましょう、全く困ってくれません。私が困っただけでした。


この方法は私に向いていないようです。

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