作戦その一 粗を探す
婚約破棄をするためには、それ相応の理由が必要です。
側室以外の理由を見つけなければなりません。
そのために、まずはフィリップの粗を探しましょう。彼に落ち度があれば、婚約破棄の理由に出来ます。
「フィリップ、昨日は急に帰ったりして申し訳ありません。ちょっと混乱してしまって……」
「気にしないでくれ。こちらこそ急な話で驚かせてしまっですまない。改めて紹介するよ。右からアーニャ、イザベル、ウェンディ、エミリー、オリヴィアだ」
五人の女性が次々と頭を下げてきます。その光景に、昨日のことは夢ではなかったと思い知らされます。
「ニーナ・ブラウンです」
とにかく認めるかどうかは明言しないでおきましょう。
「彼女達は皆、街で出会ったんだ」
どうやらフィリップは、街で行き場のない女性を見つけるたびに保護していたようです。一時は八人もいたそうです。……もう驚きませんよ。
今日は彼女達のことは一旦置いておいて、フィリップの粗を探さねばなりません。
お茶をいただきながら、よくよく観察しましょう。
ぐるりと部屋を見渡すと、きちんと掃除されているのがよく分かります。花も飾ってあり、しっかりと手入れされていることが伺えます。
「あら、あそこに飾ってあるのはダリアの花かしら。とても華やかで良いわね」
「よく気づいたね。庭で育てている花なんだ」
屋敷の管理や使用人の教育に問題はなさそうです。
今日はお茶会ということですが、フィリップの服装は上品で伯爵として相応しいものです。サイズも勿論ピッタリですわね。
「フィリップ、今日の服、よく似合っているわ」
「ありがとう、ニーナの髪飾りもとても似合っているよ」
服装も気を遣っているようですし、座り方や言動から、立ち振る舞いも問題ないことが分かります。
「ところで、最近お仕事のほうはいかがですか?あまり無理をなさらないでくださいね」
「最近は領地の治安も安定しているし、天候も良いから作物の収穫量も問題なさそうだ。今年は落ち着いていてありがたいよ」
仕事も順調なようです。
……全く非の打ち所がない婚約者だわ!粗なんて見当たりません。
この作戦は失敗のようです。フィリップの粗が簡単に見つかる訳なかったのです。彼を甘く見過ぎていました。
「ニーナは本当に色々なことに気がつくね。さすが僕の婚約者だ。君と結婚したら安心して家のことを任せられる」
へ?何を言っているのでしょう。粗を探していただけなのですが……
「あ、ありがとうございます……」
なんだか余計な誤解を与えてしまったようです。
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