新しい家族
家に戻ると、何やら騒がしかった。
ディーネに貰った野花をプレゼントして、過剰なスキンシップを受けていると、誰かがわめいている声が聞こえた。
声からして父上だろうか。何やら怒声を誰かに浴びせている。
使用人に怒鳴っているとは思えない。あの人は俺に甘いから俺が嫌がることはしない筈。なら一体誰に?
「ア、アルコ様……」
「大丈夫だディーネ。お前は仕事に戻りなさい。俺が見てくる」
「は、はい!」
気になった俺は声のする玄関に向かう。無駄にデカい家だが、幼稚園児にしては無駄にある俺の体力なら直ぐに駆け付けられる。
廊下を曲がってバルコニーから玄関を見下ろす。そこには、予想したモノとは全く別方向の光景があった。
「このクソガキ! よくも…よくもアルコくんに逆らったな!」
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」
………なあにコレェ?
「ち、父上? コレは何事ですか?」
「おお!アルコくん帰っていたのか!?」
バルコニーの上から注意すると、父上は笑顔でこっちを見た。
うん、足を止めてくれたのはいいけど、さっきまでアンタ平民の小さな子をその親らしき人の前で踏んづけようとしてたんだよ? 出来るなら父親面しないでもらえるかな?
「何事ですか父上。平民の子を虐げるなど貴族としてあるまじき行為。相応の理由があるのですね?」
「何を言ってるんだアルコくん? このガキと親はアルコくんに償いきれない罪を犯したのだぞ?」
「罪?」
何の事だ? 身に覚えがないぞ?
「あ、アルコ様! どうかお許しください! 全てはこのガキがした事です! ですからどうか私と夫だけは……!」
「お、お母さん!?」
平民らしき女性が女の子の頭を掴んで頭を無理やりさげさせる。
「何するのお母さん!痛いよ!辞めてよ!」
「お黙り! お前が貴族様の息子にケンカを売ったのが全ての原因でしょ!?」
「で、でもアレはあの子が亜人倒すのを邪魔したから…」
「黙りなさい! お前のせいで私も処刑されそうなのよ!」
「おかしいよ! 私、顔殴られたんだよ!? 骨も折られたんだよ!?」
ん? ケンカ? 亜人? 骨を折った? なんか聞いたことのあるような……。
「(あ! コイツ、俺にケンカを売ったガキ大将か!)」
状況が状況だから気付かなかったが、まさか謝りに来るとは。
けど、なんでコイツだけなんだ?他にも取り巻きがいた筈なのに。
「とりあえず、まずは頭を上げて話を聞かせてくれ」
話を要約すると、取り巻きの一人が俺と喧嘩したことを零してしまい、ソレを親が聞いて村大慌て。急いで生贄として実行犯である彼女とその親を差し出したという事になる。……うん、屑だな。
「成程。そういうことか」
「そうなんだよアルコくん! アルコくんにケンカ売るなて許せないよね! しかもこんな」
「父上は黙っててください! 話がややこしくなる!」
とりあえずアンタは黙ってろ! 客がいるから我慢してるが、普段ならもうブチ切れているぞ!
「もう謝罪はイイ。結局返り討ちしたんだ。損害も一切被ってない。お前らが謝ることはない」
「い…いえいえ! そういうわけにはいきません! オルキヌスのご子息様に喧嘩を売ったなんて償いきれません! どうか」
「・・・はぁ~」
俺は呆れてため息を付いた。
何? こんなにこの世界の貴族って怖いの? 確かに平民と違って魔法使えるけどさ、何もここまでやる必要なくない? 逆にイラって来るんだけど?
「そ、そうだ! この子を差し上げます!使用人でも何でも使ってください!」
「………は?」
そう言うや否や、母親は子供を放って我先に屋敷から飛び出していった。
あの母親ァ…。やっぱり不敬罪でしょっ引こうかな?
いや、あの女はこの際どうでもいい。問題なのはこっちだ。
「う、うぅぅ…!」
泣いている彼女をどうするかだ。
「……頭を上げろ」
「………」
ゆっくりと顔を上げる少女。
「お前の名は何ていうんだ?」
「……リーヴェ。リーヴェ・ショー」
「そうか、ならリーヴェ、今日からお前は俺たちの使用に……家族になる」
「………え?」
涙を一旦止めてこちらを見上げるリーヴェ。
「我が家では使用人は皆家族なんだ。だから、使用人になるってことは、俺たちの家族になるのと同意義……一緒なんだ。なあ、父上」
「え? そんなわけな…」
「なあ、父上!」
「も、もちろんさマイサン!」
手から魔法で雷を鳴らして脅す。
余計な事言うんじゃねえ。折角精神安定を図ってたのに全部パァにする気か!?
「まずはお近づきの印だ」
「………ッ!?」
そっと、彼女の髪に花を添える。
こういう時、贈り物をすれば女性は落ち着いてくれるとディーネが言ってた。
「……うん。私、アルコ様の子になります」
よし、コレで問題解決したな。
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